労働力不足で産業分野でロボット化振興を強化、イノプロム2024(ロシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月18日 0時15分
ロシア中部のエカテリンブルクで7月8日から11日に開催された産業総合博覧会「イノプロム」(2024年7月18日記事参照)では、数多くのビジネスプログラムが行われた。国内産業のロボット化をテーマにしたセミナーでは、複数の地場ロボットメーカーから、ロボットを扱える専門人材の育成が重要との指摘が出た。
ロボット化の必要性が声高に叫ばれるのは、ウクライナ侵攻以降、2022年9月の部分動員発令時に大量の国外脱出者が出たことや、好調な軍需産業に人手が奪われていることなどを背景に、現在のロシアが深刻な労働力不足に陥っているためだ。
7月10日に開かれた「各産業分野でのロボット化とハイテク事業向け支援策」と題したセミナーで、産業商務省工作機械・重工業局のルスラン・アフメドフ課長が、2030年までに労働者1万人当たりのロボット台数を現在の19台から100台超に増やすという目標に言及した。政府は企業のロボット導入を促進するために、産業用ロボット購入費に対する最大50%の補助金のほか、税制優遇や低金利ローンのプログラムを用意している。同課長によると、国内でロボット生産を増やすために、既存の投資優遇制度「特別投資契約(SPIC)」(2019年6月24日記事参照)を発展させた「RoboSPIC」を2025年初にも導入する可能性がある。
続いて登壇したある地場ロボットメーカーは、2022年まではサービス用ロボットを生産していたが、政府の補助金を受けて製造ラインナップを産業用ロボットに転換したことを紹介。現在、このメーカーの国産化率は65%で、国内で調達できない軸受け類や半導体は主に中国から輸入しているという。
「メード・イン・ロシア」であることを強調したロボットの展示(ジェトロ撮影)
セミナーに登壇した複数の地場ロボットメーカーからは、企業がロボットを導入する際の課題として、熟練工や専門家の不足を指摘する声があった。質疑応答では、ロシアの工科大学の学生から「わが校にトレーニング用のロボットを置いてほしい」というリクエストが出る場面もあった。
また、頼みの存在である中国から輸入される部品の品質が安定しないというのも、産業界の悩みの1つだ。先述のロボットメーカーに、講演後に中国製半導体に対する評価を個別に聞いたところ、「中国製チップの不良品の問題はいまだに改善がみられない。顧客にロボットを納品した後に不具合が見つかるケースもあり、自社の信用低下につながりかねない」と話した。
「各産業分野でのロボット化とハイテク事業向け支援策」のセッション(ジェトロ撮影)
(欧州課)
(ロシア)
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