米FRB、政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げ(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月8日 11時50分
米国連邦準備制度理事会(FRB)は11月6~7日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げ、4.50~4.75%とすると決定した(添付資料図参照)。市場では、今回の会合で0.25ポイント引き下げを行うとの見方が大勢で、予想どおりの引き下げ幅となった。今回の決定は全会一致だった。
発表された声明文ではまず、インフレの状況に関し、引き続き2%の物価安定目標に向けて進展しているとして、このところの物価の低下(2024年11月1日記事参照)を評価した。ただし、コア・インフレ率を念頭に、目標よりなお幾分高いとの見解は維持しているほか、前回の「2%目標に向かっているという自信を深めている」との文言は削除された。また、労働市場に関しては、9月(2024年10月7日記事参照)と10月(2024年11月5日記事参照)で雇用統計に大きな振れ幅が見られたものの、「年初以来、労働市場はおおむね緩和し続けている」との認識を示した。これらを踏まえ、前回と同様に「雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡している」と総括し、今回の利下げ決定につながったと説明した。
FOMC後の記者会見では、記者から、2025年1月に発足する新政権の経済政策に伴う金融政策への影響について質問がなされ、ジェローム・パウエル議長は「当面の(金融)政策決定に影響を与えることはない」と回答した。また、コア・インフレ率が2.7%と7月以降低下していないにもかかわらず、なぜ利下げをやめるという判断にならなかったのかという点についても質疑がなされ、これに対しては「前年同月比で見た際には2.7%であるものの、3カ月前比および6カ月前比では(年率換算で)2.3%程度に低下するなど、コアも含めて低下傾向にあると考えている」と答えた。そのほか、ドナルド・トランプ前大統領から議長を辞めるよう求められた場合の対応を問う質疑もあったが、パウエル議長は「そのつもりはないし、(強制的に辞めさせることは)法的に認められていない」と回答した。
9月に続き2会合連続で利下げとなったが、経済に与える影響は不透明だ。今後、トランプ次期大統領の下で予想される財政拡張による財政悪化の懸念などに伴い、米国債利回りが上昇している。これに応じて住宅ローン金利などは利下げ開始前の水準よりも上昇し(2024年11月5日記事参照)、金融緩和の効果がほぼ感じられない状況となっている。今後、関税引き上げを含めインフレの再燃につながりかねない政策も想定され、金融政策の先行きや効果はFRBのコントロールできない要因に大きく影響を受けそうだ。
(加藤翔一)
(米国)
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