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ドイツ政府、水素インフラ整備の加速とCCUSの促進に関する法案を閣議決定(ドイツ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月14日 0時0分

ドイツ連邦政府は5月29日、国家水素戦略(2023年10月17日付地域・分析レポート参照)で定める重要施策の1つとして、水素の製造・貯蔵・輸送のためのインフラを迅速に開発・拡大するための「水素加速法案」を閣議決定した(プレスリリース)。また、ドイツ連邦政府は同日、二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)を進めるための枠組みを定める「炭素管理戦略の要点」と、CO2パイプラインの整備や洋上貯留に関する法的枠組みなどを定める「CO2貯留法改正法案」を閣議決定した(プレスリリース)。

水素加速法案(ドイツ語)は、水素インフラに関連する計画・承認・調達手続きを加速化、簡素化、デジタル化するため、環境法や公共調達法などの関連法を改正するもの。電解槽(陸上設置のみ)、水素貯蔵システム、水素輸送システム、アンモニア輸入・クラッキング装置、液体有機水素キャリア(LOHC)の輸入・脱水素化設備、水素パイプライン向け圧縮機およびこれらの関連設備が対象となる。

水素インフラ整備は、最優先の公益、公共の安全に資するものとされ、規制当局が認可を行う際、他の考慮事項よりも優先され得る。例えば電解槽については、2029年末までに再生可能エネルギー由来の電力に直接接続されるか、事業者が申請書提出時に2029年末までに少なくとも80%を再生可能エネルギー由来の電力を調達する意向を表明した場合、当該電解槽プロジェクトは最優先の公益として扱われる。ただし、水不足のリスクがある場合、優先的公益には該当しない。

なお今後、5メガワット(MW)以下の小型電解槽の認可手続き撤廃をはじめとする電解槽の認可手続きを簡素化する連邦排気ガス規制法改正、建築計画法において電解槽の取り扱いを容易にする建築法改正も予定されている。

炭素管理戦略の要点(ドイツ語)およびCO2貯留法改正法案(ドイツ語)は、2022年12月に閣議決定されたCO2貯留法に基づく評価報告書で2045年の気候中立と産業競争力維持の両立のためにはCCUSの活用が必要不可欠とされたことを受けて、CO2排出の回避が困難または不可能な場合に、ドイツにおいて現状では事実上不可能なCCUSの実施に関する障害を取り除くもの。発電については、再生可能エネルギーの拡大と水素に転換するガス火力発電所の新設に注力するとしつつも、ガス火力発電所やバイオマス発電所についてCCUSを法的に認める。石炭火力発電所(熱電併給発電所を含む)にはCCUS認められない。

CCUSに対する政府の資金援助は、CO2排出の回避が困難または不可能な場合に焦点を当て、気候保護契約(2024年3月18日記事)の第2回以降の入札などで支援の対象とする。

CO2輸送については、連邦州の規制の枠内で民間所有のCO2パイプラインの建設を行えるよう、認可制度の創設などを行う。また、洋上貯留を目的としたCO2輸送を行えるよう、ロンドン議定書の改正を批准し、必要な法改正を行う。

CO2貯留について、ドイツの排他的経済水域(EEZ)または大陸棚での実施は、安全基準、生態学的基準、空間計画規制を考慮し、適切な場所であることが証明されれば、認めることとする。ただし、海洋保護区およびその周辺でのCO2貯留は引き続き禁止される。一方、ドイツ本土(陸上)での実施は、連邦レベルでは引き続き認めないものの、連邦州が州法で規定すれば、当該連邦州内でCO2の陸上貯留が実施可能となる。

なお、炭素管理戦略は、今回閣議決定された要点に従い、今後、詳細な戦略が検討、決定される予定だ。

(日原正視)

(ドイツ)

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