欧州委、森林破壊防止デューディリジェンス規則の適用開始の1年延期を提案(EU)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月7日 9時55分
欧州委員会は10月2日、森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則(2024年3月27日記事参照)の適用開始を1年間延期する改正案を発表した(プレスリリース)。2023年6月29日に施行された同規則は、大企業には2024年12月30日から、中小企業には2025年6月30日から適用される予定となっている。EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が改正案を採択した場合、同規則の適用は、大企業には2025年12月30日から、中小企業には2026年6月30日からに延期される。
欧州委は同日、同規則の実施方法を明確にすべく、デューディリジェンス義務の対象事業者などに向けた新たなガイダンスも発表した。ガイダンスには、デューディリジェンス宣言書の提出先となる情報システムの解説や、「森林劣化」「事業者」「上市(市場投入)」といった同規則の実施に欠かせない用語の定義に関する詳細な説明などが含まれている。このほか、欧州委はFAQ(よくある質問)も更新。2024年10月時点で130件の質問を掲載している。
欧州グリーン・ディール関連法の実施をより現実路線へ
今回の適用延期提案の背景には、EU内外での不満の高まりがある。域内の業界団体はデューディリジェンスの実施・報告義務の煩雑さに対して反発を強めており、オーストリアなど7加盟国は2024年3月、同規則の簡略化と適用延期を欧州委に要求。現地報道によると、9月に入りドイツも適用延期への支持を表明した。このほか、欧州議会の最大会派で中道右派の欧州人民党(EPP)グループ(2024年7月10日付地域・分析レポート参照)は、同規則は膨大な規制対応負担を企業に強いる規制だとして痛烈に批判。対象産品の主要な輸出国となるブラジルやインドネシアなどからも、同規則に対する懸念の声が上がっている。
ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、2期目に向け、企業の規制対応負担の軽減を強調する一方で、成立済みの欧州グリーン・ディール関連法の目標は維持するとしており(2024年7月19日記事参照)、適用延期の提案は同規則自体の見直しを意味するものでないとしている。ただし、環境政策においては、農業界の反発を受け、欧州委が農薬使用削減法案を撤回するなど(2024年2月13日記事参照)、実質的な後退も一部でみられる。
(吉沼啓介)
(EU)
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