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米有力シンクタンク、日本製鉄のUSスチール買収計画禁止命令の影響を解説(米国、日本)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月7日 11時15分

米国のジョー・バイデン大統領は1月3日、日本製鉄による米国鉄鋼大手USスチールの買収を禁止する行政命令を発表した(2025年1月7日記事参照)。首都ワシントンの有力シンクタンクが、行政命令発表前後で、今回の決定が及ぼす影響を解説する論考を相次いで発表している。

アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)シニアフェローのザック・クーパー氏は1月3日、「バイデンのUSスチールに関する決定は米国の国家安全保障を損なう」と題した論考を発表した。取引禁止の決定が外国企業の対米投資意欲を毀損(きそん)する可能性を指摘し、「バイデン政権が下した最悪の決定の1つ」と批判した。また、買収計画が米国大統領選挙の前年に発表され、それが激戦州のペンシルベニア州に拠点を置くUSスチールの買収計画だったことを踏まえ、「『米国労働者の味方』を主張する大統領候補者の注目を集めるのは必至だった」と振り返り、「(取引禁止の決定は)本質的に政治的な理由だ」と指摘した。今回の事例から企業が得られる教訓として、「もはや経済合理性や法的正当性は、政治的判断に比べれば二の次になっている」と述べ、外国企業が米国の有名ブランド、特に伝統的な製造業が関与する取引については、政治的要素を踏まえた投資戦略を練るべきだと提言した。

外交問題評議会(CFR)世界経済政策担当特別研究員および地経研究グリンバーグセンター所長特別研究員のマシュー・グッドマン氏は1月3日、「日本製鉄による買収の阻止、政治VS.政策」と題した2024年9月の論考を再掲した。論考では、取引禁止の決定は、(1)米国の経済競争力とサプライチェーンの強靭(きょうじん)性を損なう、(2)米国のさまざまな利益を推進するため同盟国の支持を得ようとするバイデン政権の努力を損なう、(3)日本製鉄のUSスチール買収が国家安全保障上の脅威となる可能性は全くなく、対米外国投資委員会(CFIUS)の信頼性と有用性を損ない、国家安全保障を確保する重要な手段を弱体化させるとして、「米国の利益を損なう可能性が高い」と批判した。

ハドソン研究所のシニアフェローのライリー・ウォルターズ氏は、米国メディアが、CFIUSは買収認否の最終判断をバイデン大統領に付託したと報じた直後の2024年12月24日、「日米関係は鉄よりも強い」と題した論考を発表した。論考では、多くの日本企業が、今回の事例が日米経済関係に及ぼす経済的な影響を懸念しているとした上で、「この鉄鋼の取引がこの1年間、かつてない政治的試練に直面せざるを得なかったことは非常に残念だが、日米関係は1つの取引より強固なものだ」と指摘した。また、同所日本部副部長のウィリアム・チュー氏は、2025年1月4日付の「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版の記事の中で、取引禁止の決定は「例外的なもの」として見ていると述べ、日本企業の対米投資全体への波及については否定的な考えを示した。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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