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7月の米雇用統計、失業率の上昇や賃金上昇率の低下など減速傾向が顕著に(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月5日 14時0分

添付資料PDFファイル(214 KB)

米国労働省は8月2日、7月の雇用統計を発表した。労働参加率の上昇などに伴って失業率が引き続き上昇し、景気減速のサインともされるサーム・ルール(注)を上回る水準となったほか、賃金上昇率も引き続き低下するなど、雇用情勢のさらなる減速を示唆する内容が多く含まれる結果となった。なお、今回の雇用統計では、7月にテキサス州などを襲ったハリケーン「ベリル」の影響が懸念されていたが、平均労働時間など一部に影響はみられるものの、労働省の発表によると、目立った影響は出ていないという。

就業者数(前月差6万7,000人増)、失業者数(同35万2,000人増)、労働参加率(62.7%、前月から0.1ポイント増)を踏まえた失業率は、前月から0.2ポイント上昇し、市場予想(4.1%)よりも高い4.3%となった(添付資料表1、図1参照)。過去3カ月の平均失業率は4.1%で、この水準はサーム・ルールを0.1ポイント上回る結果となっている。もっとも、今回の失業率の上昇には、25~54歳のいわゆるプライムエイジ層の労働参加率の上昇が大きく寄与しており、この影響を差し引いて考える必要がある。

非農業部門の雇用者数の伸びも大きく減速した。7月の伸びは11万4,000人増と、市場予想(17万6,000人増)を大きく下回っている。また、5月の数値は21万8,000人増から21万6,000人増に、6月の数値は20万6,000人増から17万9,000人増に下方改定された。新規雇用者数増の内訳をみると、民間部門は9万7,000人増、政府部門は1万7,000人増だった。民間部門では財部門が2万5,000人増で、伸びの大半は建設業(2万5,000人増)だった。サービス部門は7万2,000人増で、ヘルスケアを中心とした教育・医療(5万7,000人増)が伸びの大半を占め、そのほかは娯楽・接客業が2万3,000人増、倉庫業を中心とする運輸・倉庫業が1万4,000人増などだった。他方、情報業(2万人減)をはじめ、マイナスに出る業種の広がりも目立つ結果となっている(添付資料表2、図2参照)。

賃金上昇率も低下を続けている。平均時給は35.1ドル(前月35.0ドル)で、前月比0.2%増(前月0.3%増)、前年同月比3.6%増(前月3.8%増)と伸びが低下し、いずれも市場予想(前月比0.3%増、前年同月比3.7%増)を下回った。業種別にみると、これまで比較的賃金上昇率が高かった財部門での低下が目立つ。製造業など生産部門での雇用軟化の影響が波及し始めた可能性がある。

今回の雇用統計の結果は、失業率や賃金上昇率をはじめ、多くの指標で市場予想を上回る減速ペースを示すものとなった。雇用統計以外にも、労働省が発表している失業保険給付者数などのほかの統計でも、下振れする結果が目立ち始めている。7月末の連邦公開市場委員会(FOMC)でも、労働市場に関して、過熱に伴うインフレリスクではなく、むしろ、過剰な冷え込みを警戒するスタンスがみられた(2024年8月1日記事参照)。今回の結果はこうした懸念をさらに強めるものとなっており、労働市場の減速ペースが連邦準備制度理事会(FRB)などの想定以上となっていかないかという点に注目だ。

(注)連邦準備制度理事会(FRB)元エコノミストのクローディア・サーム氏が提唱した理論で、直近3カ月の失業率の平均値と過去12カ月で最も低かった失業率(3カ月移動平均)の差が0.5ポイントを上回ると、景気後退の確率が高まるというもの。

(加藤翔一)

(米国)

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