欧州委、水素市場の透明化と事業者のマッチングに向けたメカニズム設置へ(EU)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月6日 9時50分
欧州委員会は6月3日、EU域内の水素市場に新たに設置するメカニズムのプラットフォーム提供事業者の公募を開始した(プレスリリース)。同メカニズムは、域内市場で水素需給の透明性を向上させ、オフテイカー(引き取り手)と供給事業者のマッチングを支援することで、域内での水素生産と市場の拡大を後押しするものだ。
同メカニズムは、インフラの整備状況や水素の供給量、価格の推移といった市場データのほか、オフテイカーや供給事業者の需給に関する情報を収集、分析し、提供する。対象となるのは、グリーン水素(2023年6月30日記事参照)のほか、低炭素水素(注)、デリバティブだ。また、オフテイカーと供給事業者に対するマッチングサービスも提供する。同メカニズムへの参加は、域内で設立された事業者を主な対象としているが、域内のオフテイカーと域外の供給事業者のマッチングも可能としている。
欧州委は2025年半ばをめどに同メカニズムのプラットフォームを立ち上げる予定だ。域内ガス市場規則(2024年5月28日記事参照)に基づく2029年末までの時限措置で、欧州水素銀行(2024年5月8日記事参照)の一環として実施する。天然ガスを対象に実施している共同購入(2023年5月9日記事参照)を参考に、将来的には水素のほか重要原材料を対象にした欧州戦略物資共同購入プラットフォームの設置も検討している。
EUはグリーン水素の域内生産を2030年までに年間1,000万トンにすることを目標として掲げ、産業部門の水素利用でグリーン水素の最低比率目標を設定するほか、グリーン水素の域内生産に補助金を提供するなど、需給の両面から市場拡大を支援している(2023年6月9日付地域・分析レポート参照)。グリーン水素に対する関心は非常に高いものの、水素市場の不確実性から、水素生産への投資が最終的に決定した案件は少なく、多くのオフテイカーは供給事業者との契約に至っていないのが現状だ。
(注)低炭素水素の定義は、欧州委が委任規則案を2024年末までに提案する予定。
(吉沼啓介)
(EU)
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