米財務省、2024年上半期までの為替報告書を公表、日本は引き続き監視対象、韓国を対象国に追加(米国、中国、日本、台湾、シンガポール、ベトナム、ドイツ、韓国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月18日 10時0分
米国財務省は11月14日、為替政策報告書を公表した。同報告書は半期ごとに議会へ提出しており、財・サービス貿易の輸出入総額上位20カ国・地域を対象に、今回は2024年6月までの1年間の為替政策を分析・評価した。
今回の報告書では、バイデン政権発足以降のこれまでの7回と同様に、「為替操作国・地域」に該当する国・地域はないと結論付けた。為替操作国・地域の認定は、2015年の貿易円滑化・貿易執行法に基づく3つの基準(注1)の全てを満たしているかどうかを基に判断する。「為替操作監視対象」リスト(注2)には、前回の報告書(2024年6月24日記事参照)で対象となっていた中国、日本、台湾、シンガポール、ベトナム、ドイツの6カ国・地域のほか、新たに韓国が加わった。日本は2期連続の掲載となる。前回対象国だったマレーシアは、2回連続で基準を超えた項目が対米貿易黒字のみだったため、対象国から除外された。
日本が監視対象となっている理由は前回と変わらず、対米貿易黒字(656億ドル)に加え、経常収支黒字(GDP比4.2%)の2つの要件を満たしたことが要因。経常収支黒字の拡大は(1)エネルギーコストの低下や堅調な輸出に支えられて財収支の赤字幅が縮小したこと、(2)外国人観光客の増加が続きサービス収支の赤字がさらに縮小したこと、(3)国外への投資を通じた利息・配当収入の増加に加え、日本への対内直接投資残高の少なさも影響し、所得収支が大幅に黒字になっていることが理由となっている。
なお、為替介入については、2024年4月以降、日本が3回にわたり円買いドル売り介入したと、前回に引き続き事実関係が紹介されているものの、外国為替介入を定期的に報告しており、透明性があるとされており、この点は特段問題視されていない。
中国については、今回の報告書でも前回同様7ページもの分量が割かれている。2023年の対米貿易黒字は2,470億ドルと、米国の中国からの輸入シェアの減少などを受けて前回から引き続き縮小したものの、米国の貿易相手国・地域の中で圧倒的に大きいと指摘した。
為替レートに関しては、前回同様に管理体制の政策目標やオフショア人民元市場での活動など為替レートメカニズムのカギとなる点について、非常に限られた透明性しか提供していないと指摘。今回は特に、中国の国有銀行が外国人投資家と為替スワップを活用してドルを調達し、これを任意のタイミングで売却することで、直接的に当局を通さずに人民元安に対抗する取引が行われているとして、この実態についてコラムを設けて紹介している。
その他の国・地域では、韓国、台湾、ベトナム、ドイツについては対米貿易黒字と経常収支黒字の2つの基準を、シンガポールについては為替介入と経常収支黒字の2つの基準をそれぞれ前回報告書と同様に満たしているとのことだ。
(注1)財・サービス貿易の輸出入総額上位20カ国・地域を対象に、(1)大幅な対米貿易黒字(年間150億ドル以上の財・サービス貿易黒字額)、(2)GDP比3%以上の経常収支黒字、(3)持続的で一方的な為替介入(過去12カ月間のうち8カ月以上の介入、かつGDP比2%以上の介入総額)という3つの基準。
(注2)上記3基準のうち2つに該当した国・地域は「監視対象」リストに登録される。登録されると、少なくとも今後2回の報告書で監視対象国・地域として取り上げられ、3つの基準での改善が一時的でなく永続的なものとなっているかどうかについて評価される。
(加藤翔一)
(米国、中国、日本、台湾、シンガポール、ベトナム、ドイツ、韓国)
外部リンク
- 習国家主席がAPEC首脳会議に出席、バイデン米大統領、石破首相と会談(中国、日本、米国、ペルー)
- 米エネルギー省、産業部門の環境対応・競争力強化へロードマップ発表(米国)
- 米国務省、途上国向け気候変動対策支援が目標額を達成見込みと発表(韓国、シンガポール、台湾、中国、ベトナム、日本、米国、ドイツ)
- APEC首脳会議、多国間協力とインフォーマル経済問題解決の重要性確認(パプアニューギニア、ブルネイ、インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国、フィリピン、ベトナム、香港、マレーシア、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、米国、チリ、ペルー、メキシコ、ロシア)
- 米財務省、CFIUSの罰則と執行権限強化する最終規則発表、FIRRMA以来の大型改定(米国)
- トランプ氏、米商務長官に民間企業CEOのラトニック氏起用、関税政策を主導(米国)
- 東南アジアのEC拡大、ライブコマース人気が牽引(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア)
- 米道路交通安全局、フォードに対し史上2番目に高額な罰金を命令(米国)
- ドイツ自動車産業連合会、各州のEV向け公共充電施設数など発表(ドイツ)
- ドイツ経済諮問委員会が年次報告書を発表、景気循環・構造的要因で経済成長が見込めず(ドイツ)
この記事に関連するニュース
-
投資で大きく負けないために知っておきたい、ファンド運用における「為替リスク」の考え方【資産運用のプロが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月25日 8時15分
-
ベトナム、対米貿易黒字急増で関税リスク高まる 業界に懸念
ロイター / 2024年12月6日 18時54分
-
歴史的な〈ドル高円安〉続くが…「今後は輸出が増え〈ドル安円高〉に」との見通しが危険だといえるワケ【経済評論家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月1日 9時15分
-
2024年通年のGDP成長率予測、3.5%前後に上方修正(シンガポール)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月29日 11時30分
-
米有力シンクタンク、トランプ次期政権下の日米関係の展望を解説(米国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月27日 15時35分
ランキング
-
1イスラエル・ネタニヤフ首相がトランプ氏の就任式出席へ 逮捕状を出されて以降、初の外遊か
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月26日 15時13分
-
2「死刑囚よ地獄に行け!」 トランプ氏Xマスに投稿
共同通信 / 2024年12月26日 11時26分
-
3ロシア南部、黒海の石油流出で緊急事態宣言
ロイター / 2024年12月26日 10時19分
-
4ロシア軍のミサイル誤射説も浮上 カザフスタンの旅客機墜落、死者は38人に
産経ニュース / 2024年12月26日 9時4分
-
5モザンビークの刑務所で暴動、33人死亡 約1500人脱走
ロイター / 2024年12月26日 12時23分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください