ラマダン始まる、路上犯罪に要注意(パキスタン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月13日 11時25分
パキスタンで3月12日、イスラム教の断食月(ラマダン)が始まった。4月9日まで続く予定(月の見え方により1日程度ずれることがある)。今回の特徴は、景気低迷が続く中で再び高インフレ下のラマダンを迎えたことだ。日系企業が集中する最大商都カラチなどでは、困窮した人々による路上犯罪が増加する恐れがあるので注意が必要だ。
経済危機が続くパキスタンでは、2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)の実質GDP成長率が0.3%に落ち込み、景気はいまだに低迷している。外貨不足で輸入が困難な状況が続く中、高インフレが長引いている。前年のラマダン時期に比べて物価高騰は沈静化しつつあるものの、2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比23.1%上昇し、特に食品とガソリンの価格が高止まりして、庶民の生活を圧迫している。政府は低所得者向けの食料配給「ラマダン救済パッケージ」予算を75億パキスタン・ルピー(約37億5,000万円、1パキスタン・ルピー=約0.5円)から125億ルピーに引き上げ、社会的弱者への配慮を強めている。
日本では、ムスリム(イスラム教徒)による日中の断食ばかりが注目されがちだが、ラマダンは商業が1年で最も活発化する時期でもある。人々は日没後、友人や親戚と自宅やレストランで豪勢な食事を楽しんだり、イードアルフィトル(断食明け大祭)に向けて新しい服などの買い物に出掛けたりする。ラマダン期間中の特別メニューを用意するレストランや、期間限定セールを打ち出す店も多い。そのため、通常月よりも出費がかさむ。国外からの郷里送金も増える傾向にあり、2月の送金額は22億5,000万ドルと、前年同期比13%増だった。
ラマダン中は信仰心が高まるといわれ、テロの脅威が高まる傾向がある。特にラマダン最終週は信仰心がより高まるとされ、2022年にはカラチ大学の孔子学院で自爆テロ事件が発生した。在カラチ日本総領事館は3月12日、宗教関連施設や政府・軍・治安当局、中国関連施設などには近づかないよう注意喚起を発出した。
(山口和紀)
(パキスタン)
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