欧州産業界、多数派の親EU連立による産業競争力強化に期待(EU)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月12日 15時10分
EU政策を専門とするベルギーのシンクタンクである欧州政策センター(EPC)は6月10日、欧州議会選挙の暫定結果(2024年6月11日記事参照)を受けて、今後の見通しに関するセミナーを開催した(録画)。EPCのファビアン・スレーグ所長は、民主主義が平時だけでなく困難な時にも機能することを有権者に納得してもらうため、市民に対して、私たちが下す必要のある選択には厳しいものが含まれることを率直に伝えられるリーダーシップが求められると強調した。ロシアによるウクライナ侵攻は、欧州全体にとっての危機であると市民に伝える必要があるとし、防衛や欧州グリーン・ディールなど、政策を実行する優先順位付けが求められるとした。
EPCのヤニス・エマヌイリディス副所長は、中道会派は体制を維持したものの、右傾化が顕著となったフランス、ドイツをはじめ、中道派、環境政党が支持を大きく落としたことは事実と述べた。一方、ドイツで支持を大きく落とした環境政党は、北欧では高い支持率を得るなど、加盟国でも勢力図が異なることを指摘した(添付資料表参照)。右傾化の動きも加盟国により異なるが、フランス、ドイツの右傾化は、今後EUレベルで、グリーン・ディール政策などを実行に移す段階において影響が出かねないとした。また、選挙期間中は、さらなる右傾化の懸念もあり、直面している課題を率直に討議する機会がなかったことを指摘。6月11日時点の暫定投票率は51.0%と、前回の投票率(50.6%)を上回ったが、事前の世論調査でみられた関心の高さほど投票行動には結びつかなかった(2024年5月2日記事参照)。中道会派による安定した多数派を形成し、行動を起こすことが必要とした。
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は、欧州議会選挙の安定した投票率の高さは、市民の関心を表すと声明を発表。フレドリック・ぺルソン会長は、主要政党は親EUの多数派を形成し、産業競争力を改善するための行動をとり、早期にリーダーを決めるよう要請した。ポピュリズムへの最善の対策は、投資を呼び込み、質の高い雇用を創出し、経済が成長することだと強調。同連盟は4月に、次期政権への優先課題「EU再起(Reboot Europe)」を提示している。
(薮中愛子)
(EU)
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