在欧日系企業のEPA利用割合が拡大、輸入国税関での確認レベルの差などが課題(欧州、EU、英国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月27日 0時10分
欧州に進出する日系企業のうち、日本がEUおよび英国とそれぞれ締結している経済連携協定(EPA)を利用している割合が、輸出および輸入において、いずれも前年比で10%以上増加したことが、ジェトロの調査レポート「2024年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」(注1、2024年12月19日記事参照)で明らかになった。
2024年に日本からEUへの輸入において日EU・EPAを利用していると回答した在欧日系企業の割合は、2023年の45.2%から13.3ポイント増の58.5%だった。特にゴム製品の企業で85.7%と高い利用割合が示された(注2)。2024年に発効から5年目を迎えた日EU・EPAでは、段階的に関税率が削減される品目もある。例えば日本からEUへの輸入において、HSコード第40類の「ゴムおよびその製品」の一部は発効3年目まで段階的に関税率が削減、4年目から撤廃された。
日本から英国への輸入において、日英EPAを利用している在欧日系企業の割合は、2023年の33.1%から12.7ポイント増の45.8%だった。特に一般機械で63.6%と高い利用割合が示された(注2)。2024年に発効から3年目を迎えた日英EPAでは、全体として日EU・EPAの関税率・撤廃期間に追いつくかたちで関税削減・撤廃されており(通称「キャッチアップ」)、例えばHSコード第84類の「原子炉、ボイラーおよび機械類ならびにこれらの部分品」の一部は発効2年目まで段階的に関税率が削減、3年目から撤廃された。
EUまたは英国から日本への輸入において、日EU・EPAあるいは日英EPAを利用した割合はそれぞれ44.6%、31.0%と、いずれも前年比14.1ポイント増だった。
また、日EU・EPAを利用した輸入において、輸入国税関から原産性についての確認(検認)を受けたと回答した在欧日系企業の割合は12.9%だった。確認を受けた税関の37.0%がドイツ、要求された資料の69.2%が原産地証明だった。EPA利用における懸念や課題としては、税関の国や担当者によって確認レベルが異なることや、EU域内で統一されたHSコードなどの見解がないこと、原産地規則の厳しさなどが挙げられた。
日EU・EPAおよび日英EPAでは、第三者機関を経ずに、輸出者が自ら原産地に関する申告文を作成、または輸入者がその知識に基づいて輸入申告時に必要情報を提供する「自己申告制度」を採用している。
日EU・EPAおよび日英EPAの詳細についてはジェトロの特集ページ「日EU経済連携協定(EPA)/日英包括的経済連携協定(EPA)について」を、またEPA/FTAの活用事例については地域・分析レポート特集「EPAを強みに海外展開に挑む-日本企業の活用事例から」を参照のこと。
(注1)海外進出日系企業実態調査(欧州編)は8月27日~9月19日に実施し、西欧14カ国、中・東欧9カ国の日系企業1,324社を対象とした。うち、772社から有効回答を得た(有効回答率58.3%)。
(注2)回答数が5以上の業種で比較。
(牧野彩)
(欧州、EU、英国、日本)
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