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東部の洪水被害でインフラが遮断、自動車産業にも影響(スペイン)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月5日 16時30分

スペイン東部バレンシア州などで10月29日に発生した記録的豪雨は200人以上の死者を出し、スペインの水害では過去最多となった〔オスカル・プエンテ運輸・持続可能モビリティ相のX(旧Twitter)11月3日〕。停電や断水によるライフラインまひ、主要道路や鉄道線路の寸断により、多くの住民が孤立した。週明け後も、軍・警察関係者合わせて約1万7,000人が動員され、不明者の捜索や排泥作業にあたっており、市民生活の復旧には時間がかかるとされる(首相府11月3日)。11月4日現在、高速鉄道はバレンシア~バルセロナ間が運行再開済みだが、バレンシア~マドリード間は復旧まで2週間以上かかる見通し。

バレンシア州には自動車産業が集積しており、10月30日付のEP通信によると、被災地に立地するフォードは工場の操業を少なくとも11月11日まで停止する。バレンシア自動車クラスター(AVIA)によると、部品サプライヤー企業数社で工場の設備や機器が洪水の被害を受け、国内の完成車工場への納品遅れが発生しているほか、道路寸断によりバレンシア港で輸入される部品の輸送にも影響が出ている、と報じられている。なお、政府は11月5日の閣議で一時帰休(レイオフ)補助金をはじめ、企業や個人事業者向けの支援を発表する予定だ。

気候変動の影響で水害規模が年々拡大

今回の被害は、地中海沿岸地域で毎年、季節の変わり目に発生する寒冷渦(寒冷低気圧)の影響によるもの。近年は気候変動の影響により降水量が増加しており、10月29日夕刻にバレンシア州内陸部で発生した集中豪雨は、午後6時~7時の1時間に174.4ミリとスペインの最大1時間降雨量を記録。主要河川や雨水排水管の許容水量を大幅に超え、海岸部の低地へと流出する過程で流速を増し、大洪水に発展した。

なお、11月4日には、バルセロナでも同低気圧による豪雨が発生し、バルセロナ空港の施設の一部が冠水して発着便の遅延やキャンセルが発生した。バルセロナ~マドリード間の高速鉄道は午後に運行が再開されたが、近郊鉄道は全線運休となっている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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