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シンガポール政府投資ファンドのGIC、利回りの低下継続見込む(シンガポール)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月30日 1時0分

シンガポール財務省管轄下の政府投資ファンド、GIC(旧称:シンガポール政府投資公社)は7月24日、2024年3月末までの20年間の実質運用利回りが年平均3.9%と、前年(4.6%)から低下したと発表した。GICのリム・チョウキアット最高経営責任者(CEO)は年次報告書の中で、地政学上のリスクやインフレの上昇、新興国の成長減速など「現行の極めて先行き不透明な状況が継続し、利回りを押し下げ続ける可能性がある」と指摘した。

GICは1981年、シンガポールの外貨準備金を海外の債券や株式などに投資し、運用する会社として発足した。同社は同じ財務省管轄下の投資ファンドのテマセク・ホールディングスと異なり、運用資産額を公表していない。同社は近年、投資環境の変化を受けて、ポートフォリオの内容を多様化することで、投資の柔軟性を強化している。その一例が、不動産やインフラへの投資の拡大だ。同社の投資ポートフォリオに占める不動産の割合は2021年3月期の8%から、2024年3月期に13%に拡大した(7月24日同社プレスリリース)。

また、GICの投資ポートフォリオの国・地域別では、日本を除くアジアの割合が2021年3月期の26%から2024年3月期に22%へと縮小した。日本の割合も2021年3月期の8%から2024年3月期に4%へと縮小した。GICは2023年4月、米国の投資会社ブラックストーンから日本の物流施設6棟を約8億ドルで取得すると発表。また、同年7月に愛知県の物流施設を大和ハウス工業から取得すると発表した。同年12月には、大和ハウス工業が大阪府高槻市と福岡県鳥栖市に開発した物流施設2棟の買収を発表している。同社は日本の不動産に相次いで投資しているものの、円安の影響などで日本の資産割合が縮小した。

一方、GICは今後の投資機会として、気候変動への対応を挙げた。リムCEOは「GICの主要な強みである長期的かつ柔軟な資本を用いて、(環境負荷の少ない)『グリーンスチール(注)』や蓄電池などの気候テックが直面する資金ギャップを埋めたい」と述べた。鉄鋼業界の脱炭素化に取り組むスウェーデンの製鉄会社H2グリーンスチールは2023年9月、GICや日立エナジーなどから総額約15億ユーロを調達したと発表していた。調達資金は欧州初のギガワット規模の水電解装置(エレクトロライザーラ)設置に充てられ、世界初の大規模グリーンスチールのプラントとなる予定だ。

(注)グリーンスチールとは、水素還元製鉄など温室効果ガスが発生しない製鉄技術で製造された鉄鋼を指す。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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