連邦政府、メディカルサイエンス分野の成長を導くRNAブループリントを発表(オーストラリア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月5日 0時0分
連邦政府は7月16日、オーストラリアのメディカルサイエンス分野の製造能力を拡大し、先端産業の成長や高賃金の雇用を創出するため、政府、学術界、産業界がリボ核酸(RNA)分野の発展を目指して取り組むべき行動を示した「オーストラリアRNAブループリント」を発表した。連邦政府は、人工知能(AI)やロボット工学など新しい技術を活用したデジタルヘルスや医療機器分野などメディカルサイエンス分野の産業競争力の向上を目指し、4月15日に「メディカルサイエンス共同投資計画」を発表していた。今回のブループリントの内容はこの計画にもとづくもので、最終的には国内でRNAワクチンや治療薬のような付加価値が高い革新的な製品の開発が行われることを目指している。
RNA分野の成長は今後10年間で、オーストラリアのGDPを最大80億オーストラリア・ドル(約7,840億円、豪ドル、1豪ドル=約98円)押し上げると試算されており(注1)、同ブループリントには、活力のあるRNA研究とエコシステムを実現するため、次の5つの主要目標が示された。
国内のRNA分野のエコシステムの連携
RNA分野の人材育成やインフラ整備
RNAの商業化に必要な研究・投資などの環境整備
RNAに関連する規制とガイダンスの整備の推進
RNA分野における国際連携の構築と強化
同ブループリントを策定した背景として、連邦政府はクリーンエネルギー、技術革新に資する新産業を育成し、付加価値のある製品を国内で生産していく「フューチャー・メード・イン・オーストラリア」イニシアチブ(2024年4月22日記事参照)の実現を今年度から目指している。その観点からも、連邦政府は、国内の医療分野の製造やバイオテクノロジーといった新産業はポテンシャルが高く、永続的にオーストラリアの比較優位性を強化する可能性があり、国益にも合致する分野だ、と説明している。また、既存施策(注2)でもメディカルサイエンスは優先分野と位置付けられ、例えば、連邦政府が2023年5月に国益の観点から特定した重要技術リスト(7分野)(注3)の1つにバイオテクノロジーが選ばれている。
連邦政府のエド・ヒュージック産業・科学相は「オーストラリアの健康・医療分野の研究部門は世界7位にランクインしている。政府は引き続きRNA分野の適切な体制を確保し、オーストラリアの製造能力を向上させ、同分野における地域のパートナーとして位置付けられるよう支援していく」と述べた。
(注1)連邦政府は、会計事務所デロイトによる2023年の試算を引用している。
(注2)連邦政府だけでなく、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、クイーンズランド州、南オーストラリア州、西オーストラリア州でもRNA分野の既存の支援策がある。詳細は、同ブループリントのウェブサイトで確認できる。
(注3)7分野の重要技術とは、(1)先端製造・材料技術、(2)AI技術、(3)先端情報通信技術、(4)量子技術、(5)自律システム・ロボティクス・センシング技術など、(6)バイオテクノロジー、(7)クリーンエネルギー発電・蓄電技術。
(青島春枝)
(オーストラリア)
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