第3四半期の米GDP、前期比年率2.8%増と堅調も、内容はまちまち(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月31日 13時30分
米国商務省が10月30日に発表した2024年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率2.8%となった(添付資料表、図参照)。市場予想(3.0%)をやや下回ったものの、アトランタ連銀が発表しているGDPNowの予測(2.8%)と一致し、全体的には堅調に推移した。ただし、消費の伸びには特殊要因含みの面がみられるなど、米国経済の実態は数値ほどの強さではない可能性が示唆されている。
需要項目別にみると、内需では個人消費支出(PCE)が3.7%増、寄与度2.5ポイントと、前期に続き最大の押し上げ項目となった。内訳では、サービス消費(2.6%増、1.2ポイント)が前期とほぼ同程度の伸びを示したことに加え、財消費(6.0%増、1.3ポイント)が大幅に伸びたことが要因。財消費では、医薬品などその他非耐久消費財(6.6%増、個人消費内寄与度0.8ポイント)、レクリエーショングッズ(8.2%増、0.4ポイント)、自動車・同部品(9.7%増、0.3ポイント)、食料品(3.1%増、0.2ポイント)などが主な押し上げ要因となった。もっとも、こうした伸びの背景には6月に起きたサイバー攻撃の反動増を受けた自動車販売の増加(2024年8月16日記事参照)やハリケーンなどに備えた備蓄需要の増加など特殊要因も含まれており、数字が示すほどに消費者の支出意欲は高くない可能性もある。また、所得階層による消費格差を指摘する声もある(ブルームバーグ10月30日)。
次いで押し上げに寄与したのは政府最終消費支出・粗投資(5.0%増、寄与度0.9ポイント)で、国防関係支出が過半を占めた。
民間投資のうちの設備投資(3.3%増、0.5ポイント)もプラスを維持したが、内容はまちまちだった。11月5日の大統領選挙に伴う先行きの不透明さが忌避されており(2024年10月4日記事参照)、製造業における構築物投資の伸び(2.2%増)は前期(21.9%増)から大幅に低下した。一方、情報関連機器(14.7%増)やソフトウエア投資(1.9%増)などは底堅く推移しており、人工知能(AI)関連の旺盛な投資が要因として指摘されている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版10月30日)。
一方、住宅投資は金利水準や住宅価格の高さなどがネックとなり、戸建て・集合住宅ともに低調で、5.1%減(マイナス0.2ポイント)だった。
外需は輸入の伸び(11.2%増)が輸出の伸び(8.9%増)を上回った結果、0.6ポイントのマイナス寄与となった。当期の設備投資で増加がみられた情報機器関連の輸入が伸びたほか、大統領選や東海岸における港湾ストライキの影響を忌避して小売事業者が消費財の輸入を前倒したこと(2024年10月10日記事参照)が影響した。
在庫投資は0.2ポイントのマイナス寄与となった。上記の製造業における設備投資控えに応じて、企業が在庫を減らしたことなどが反映されたとみられる。
(加藤翔一)
(米国)
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