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ハリス米副大統領、「USスチールは米国内で所有・運営されるべき」と激戦州の選挙集会で発言(米国、日本)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月5日 13時30分

米国のカマラ・ハリス副大統領は米国の祝日「レイバーデイ(労働者の日)」の9月2日、ペンシルベニア州ピッツバーグで開催された選挙集会で、日本製鉄による米国鉄鋼大手USスチールの買収計画に関して言及し、「われわれは米国の製造業を強化していく」「USスチールは米国内で所有・運営される企業であり続けるべきだ」と述べた。

日本製鉄のUSスチール買収計画を巡っては、2023年12月に両社が買収計画の合意を発表した(2023年12月19日記事参照)。USスチールの株主は買収計画に賛成した一方で、全米鉄鋼労働組合(USW)が反対している。また、2024年1月にはドナルド・トランプ前大統領が買収計画に反対を表明したほか、3月にはジョー・バイデン大統領もUSスチールは米国の鉄鋼企業であり続けることが重要との声明を発表した(2024年3月18日記事参照)。USスチールが本社を構えるペンシルベニア州は11月の米国大統領選挙で勝敗を左右する激戦州の1つとされる。首都ワシントンの有識者は、大統領候補者は米国の伝統的な製造業企業が外国企業に買収されることを容認するイメージが、USWの組合員を含めた有権者の投票心理に与える影響を考慮している、といった政治的動機を指摘している(2024年4月15日記事参照)。

日本製鉄はハリス副大統領の発言後の9月4日、買収完了後のUSスチールの運営方針を発表した。USスチールが米国の象徴的な企業であり続けるためとして、(1)取締役の過半数は米国籍とする、(2)取締役会は少なくとも3人の米国籍の独立取締役を含む、(3)経営陣の中枢メンバーは米国籍とする、などのガバナンス体制を構築するとした。また、日本製鉄はUSスチールの米国内生産を最優先するとしたほか、日本製鉄はUSスチールによるアンチダンピング関税(AD)や補助金相殺関税(CVD)などの米国政府への通商措置請求の意思決定に干渉しないなどとした。また、「ウォールストリート・ジャーナル」(9月4日)によると、USスチールのデビッド・ブリッド社長兼最高経営責任者(CEO)も同日、売却計画を支持するとしつつ、破綻した場合には製鉄所を閉鎖し、本社をペンシルベニア州ピッツバーグから移転する可能性が高いと述べた。

なお、「ワシントン・ポスト」は9月4日、バイデン大統領が同買収計画を阻止する準備を進めていると報じた。バイデン政権は同買収計画について、対米外国投資委員会(CFIUS)による国家安全保障上の懸念に関する審査の対象になり得るとしていた(2023年12月25日記事参照)。CFIUSが設立された1975年以降、大統領はCFIUSの勧告に基づいて、8件の取引禁止命令を発令している(注)。そのすべてに何らかのかたちで中国が関与していた一方、日本が関与していた事例はなかった。

(注)CFIUSの概要や動向については、ジェトロの2023年10月2日付地域・分析レポート参照。直近では、2024年5月にバイデン大統領が外国人による米軍施設に隣接する不動産の購入を差し止める行政命令を発表した(2024年5月14日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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