マルコス大統領がトランプ氏に祝辞、米国とのさらなる関係性強化を強調(フィリピン、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月14日 10時25分
フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は11月6日、ドナルド・トランプ氏の米国大統領選挙での勝利を受け、同氏に祝辞を送った。マルコス大統領は「フィリピンは米国と協力し、両国に利益をもたらすあらゆる問題に取り組むことを期待している」と述べた。また、安全保障、貿易・投資、食糧・エネルギー安全保障、再生可能エネルギー、気候変動対策、デジタル変革、インフラ開発、人道支援などの分野において、長年にわたり強固な協力関係を築いてきた両国のパートナーシップに引き続きコミットする意向を示した。
経済面の影響について、地場最大級の民間銀行であるBDO銀行シニアバイスプレジデントのダンテ・ティンガ・ジュニア氏は11月7日、マニラ首都圏で行われた経済セミナーで「フィリピンは純輸入国のため、関税引き上げによる輸出減少など、政権交代によって他国で懸念されている点にはあまり影響を受けない。一方、関税引き上げおよび法人税の減税が行われ、米国の財政赤字拡大による政策金利上昇が発生してペソ安になると、フィリピンにとっては輸入コストが増加し、さらなる物価高が懸念される」とコメントした。
フィリピンの国際収支統計で同国の経常収支を項目別にみると、サービス収支と第二次所得収支の黒字が貿易収支の赤字を相殺する構造になっている(2024年4月4日記事参照)。特に、第二次所得収支の黒字はフィリピン人海外就労者(OFW、注1)による本国送金額が支えており、送金元を国・地域別にみると米国が最も多い。また、フィリピン中央銀行(BSP)によると、2023年のOFW送金は同国GDPの8.5%を占めている。米国の移民政策が今後厳しくなった場合はOFWが減少し、国際収支の悪化やGDP成長率への影響が懸念される。
安全保障面では、マルコス政権は同盟国である米国との連携強化の姿勢を鮮明化させるほか、国防政策を重要課題としている(注2)。米国とは相互防衛条約(MDT)や防衛協力強化協定(EDCA)を結んでおり、合同軍事演習「バリカタン」の実施や、2023年には新たに4カ所の米国軍事基地設置を許可するなど、連携を強めている。
なお、日本、米国、フィリピンは、4月に開催された3カ国の首脳会談において、フィリピンでのインフラ投資促進を目的とした戦略的投資プロジェクト「ルソン経済回廊」を立ち上げたことを発表した(2024年5月8日記事参照)。現地報道によれば、フレデリック・ゴー投資・経済担当大統領補佐官は11月11日、「新政権下においても、同プロジェクトは継続される見込みである」とコメントした(11月11日付「インクワイアラ―」紙)。
(注1)BSPによれば、2023年のOFWによる米国からの送金は137億1,000万ドルで、2024年1月から8月までの累計額は91億6,500万ドル(前年同期比2.1%増)だった。なお、米国センサス局のアメリカン・コミュニティー・サーベイ(ACS)によれば、2021年時点で米国に居住または就労しているフィリピン人は、約450万人だった。
(注2)フィリピンでは2024年10月、南シナ海問題などを背景とし、マルコス大統領は同国内の防衛産業発展のための法案に署名した(2024年10月22日記事参照)。
(西岡絵里奈、アセンシオ・アシュレイモイラ)
(フィリピン、米国)
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