世界初の米民間月面着陸船、復活のめど立たず永久停止に(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月29日 0時15分
米国の宇宙開発企業のインテュイティブ・マシーンズ(テキサス州ヒューストン)は3月24日、2月に月面着陸に成功した同社の月着陸船「オデュッセウス」を永久停止すると発表した。
オデュッセウスの月面着陸は民間企業としては世界初、米国にとっても、1972年のアポロ17号の月面着陸以来の快挙となったが、予定より1.5キロ以上離れた地点に着陸した上、脚部が損傷し、地表に対し30度傾いた状態となっていた(2024年2月28日記事参照)。
オデュッセウスは2月29日、米国航空宇宙局(NASA)と民間ペイロード(注)の委託任務に関する全データ送信を完了し、同日、休眠状態に入った。月面着陸船は太陽光パネルで充電する関係上、月の夜間は機能を停止させ、休眠状態に入る。同様に想定と異なる着陸姿勢で2月に月面に着陸した日本の小型月着陸実証機(SLIM)は、月面で越夜しても安定して通信ができたため、オデュッセウスからも同様に信号が来ることが期待されていた。同社は、十分な太陽光がオデュッセウスの電力システムを充電し、無線が再度起動する可能性があるとして、オデュッセウスからの信号が届くのを待ったが、日中は摂氏100度、夜間はマイナス170度となる月の寒暖差に耐えられるようには同機が作られていなかったこともあり、米国時間の3月23日午前10時30分に通信が不可能と断定し、永久停止が決定された。
なお、インテュイティブ・マシーンズは、同社の2回目の月面着陸計画「IM-2(Intuitive Machines-2)」を2024年内に打ち上げ予定だ。
そのほか、月面着陸に向けて、5月に中国の「嫦娥6号」、2024年内には米国アストロボティック(ペンシルベニア州ピッツバーグ)の「グリフィン」(2024年1月10日記事参照)がそれぞれ打ち上げられる予定だ。日本のアイスペースも、ミッション2の打ち上げを最速で2024年冬に計画していることを発表している。米国ファイアフライ・エアロスペース(テキサス州シダ―パーク)は2024年後半に「ブルーゴースト」を打ち上げる予定で、数多くの月面着陸の計画が進行中だ。
(注)ロケットによって打ち上げる貨物のこと。
(谷本皓哉)
(米国)
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