トランプ米政権のメキシコ、カナダ、中国に対する追加関税の現状と展望のまとめ(米国、メキシコ、カナダ、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年2月4日 11時55分
米国のドナルド・トランプ大統領は2月1日、メキシコ、カナダ、中国に対する追加関税を課す大統領令を発令した。しかし、トランプ氏は2月3日にSNS投稿を通じて、メキシコとカナダに対する追加関税の適用開始の延期を発表するなど、状況は流動的だ。3カ国に対する追加関税に関する経緯、現況、今後の展望をまとめる。
経緯:追加関税をたびたび予告、交渉戦略との受け止めも
トランプ氏は2024年11月にSNS投稿で、メキシコとカナダに25%、中国に10%の追加関税を課す意向を初めて示した(2024年11月26日記事参照)。投稿では、大統領就任初日(1月20日)の適用開始を予告したが、実際には実行されなかった。同氏は、1月21日の記者会見で2月1日の賦課開始を示唆したものの、首都ワシントンのシンクタンクや法律事務所では、「法律上や実務上は実行可能でも、交渉戦略上のレトリックに過ぎないのでは」との受け止めも少なくなかった(注)。実現性が高まったのは、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官が1月31日の記者会見で、記者からの質問に対し、「明日(2月1日)関税を課す」と発言して以降だった。トランプ氏も同日の記者会見で「交渉手段ではない」「譲歩の余地はない」と述べ、強硬姿勢を示した。
現在:追加関税の適用開始日は後ろ倒し
現時点(米国東部時間2月3日午後5時時点)での状況は流動的だ。トランプ氏は2月1日に追加関税に関する大統領令を発令し、追加関税の適用開始を2月4日に「後ろ倒し」した(2025年2月3日記事参照)。さらに、トランプ氏は2月3日にSNS投稿を通じて、メキシコとカナダに対する追加関税の適用開始を3月に延期すると明らかにした(2025年2月4日記事参照)。一方、中国に対する適用開始の延期への言及はなく、2月4日に適用開始されるとみられる(2025年2月4日記事参照)。
今後:さらなる措置の可能性も残る
メキシコとカナダに対する追加関税は「一時停止」であり、交渉の状況によっては追加関税が課される可能性が残る。また、トランプ氏が1月20日に発表した大統領覚書に基づく、関係省庁による貿易赤字などの状況調査(2025年1月22日記事参照)は継続しているとみられ、調査期間終了後(4月1日が報告書提出期限)に、調査結果に基づいて国際緊急経済権限法(IEEPA)、1962年通商拡大法232条、1974年通商法301条などに基づく追加関税などの輸入制限措置が講じられる可能性も依然として残る。
首都ワシントンの法律事務所の弁護士は、ジェトロの問い合わせに対し、「今後4年間の継続的な課題は、常に予測不可能ということだ」と述べている。具体的な予測が困難であることを踏まえれば、日本企業にとっては、関税が課された場合に具体的な影響を把握するためのサプライチェーンの継続的な可視化や、流動的な状況を適時把握するための情報収集機能の強化などの対応が求められる。ジェトロは本件に関して、経済産業省と共同で「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」を設置し、積極的な相談対応・情報提供を行っていく。
(注)シンクタンクの公表する論考、ジェトロのヒアリングなどに基づく。
(葛西泰介)
(米国、メキシコ、カナダ、中国)
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