河套深セン・香港科学技術イノベーション協力区の発展要綱を発表(香港、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月28日 13時30分
香港政府は11月20日、広東省深セン市と共同で開発を進める「河套深港(深セン・香港)科学技術イノベーション協力区」の香港園区発展要綱を発表した(注1)。李家超(ジョン・リー)行政長官は、10月16日に行った2024年の施政方針演説で、同協力区の香港園区を世界クラスの産学研究開発とパイロット生産拠点、イノベーションとテクノロジー(I&T)リソースのハブに発展させ、職員による香港園区内の円滑な移動やドローンを活用したクロスボーダーの物流、資本移動などを検討すると発表していた(2024年10月31日記事添付資料参照)。
本発展要綱は、香港園区の開発の方向性、戦略、目標、香港園区と深セン園区のクロスボーダーの生産要素流動を促進するための措置など、香港園区の明確な開発計画を策定することを目的にしている。香港園区の開発計画では、西から東へ開発のフェーズを2段階に分ける。開発は5年ごとの開発マイルストーン(2030年と2035年)を設定し進められ、第1段階は2030年までに完了する見込み。第1段階では、「生命健康技術」「人工知能(AI)とデータサイエンス」「新エネルギー技術・先端製造業」の3分野のエリアを開発する予定だ。当該3分野は、深セン園区での開発推進が強調される最先端技術産業に対応しており、「香港創新科技発展藍図(香港のイノベーションとテクノロジー発展の青写真)(注2)」で推奨される3つの戦略技術産業とも一致する。
施政方針演説で示したとおり、香港園区と深セン園区間の人材、物流、資本、データの流れの円滑化政策や措置についても言及がある。人材については、出入境事前登録の手配を済ませた者については両園区間の往来時間を短縮する。また、両園区をつなげる歩道橋の建設も検討に挙がっている。物流については、通関手続きや承認手続きを合理化する「グリーンレーン」や「ホワイトリスト」などの活用や電動垂直離着陸機(eVTOL)を介した両園区間の物資の移送を可能にするための検討を進める。
資本については、香港園区を活用し、香港政府は中国本土の関係当局と、香港に拠点を置く中国本土企業のために、クロスボーダーの資金調達や資金移動円滑化に向けた検討を行う。また、両園区間の産業プロジェクトの相互融資を支援するため、中国本土の関係当局と積極的に検討するとした。データについては、関連するデータ・セキュリティー法の順守とリスクコントロールを前提に、中国本土から香港への研究データの流れを拡大する。臨床試験に関連する中国本土の医療・健康データに関しては、香港園区内でアクセス・利用するためクロスボーダーでの流通を実現に向けて、中国本土の関係当局と積極的に検討する。
李行政長官は「香港園区開発計画第1段階の第1期となる建物の完成に伴い、香港園区は2025年から運営段階に入る。運営段階では、企業誘致と投資誘致に重点を置くとともに、中国本土や海外の一流企業や人材に対してもアピールを行う」とした。
(注1)2017年1月、香港政府は深セン市政府と「落馬洲・河套地域の共同発展を促進する協力備忘録」に署名し、河套において深セン・香港科技創新協力区を建設することを明確にした。同協力区は、香港園区(約0.87平方キロ)と深セン園区(約3.02平方キロ)の2つの園区で構成される。
(注2)2022年12月22日付で公表された、香港を2032年までに国際的なI&T開発センターへ発展させるために策定された青写真。
(松浦広子)
(香港、中国)
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