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味の素、環境配慮型食品を柱とする新ブランド、シンガポール拠点に展開へ(シンガポール)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月19日 1時5分

味の素(本社:東京中央区)は2024年8月、自然の恵みを生活に取り入れた新ブランド「Atlr.72(アトリエ・セブンツー)」を立ち上げ、シンガポールでの展開を開始した。今後は常設店の開設も視野に検討を進める。同社グリーン事業推進部の小澤由行戦略グループ長が9月4日、ジェトロとのインタビューで明らかにした。

同社がAJINOMOTOブランドではなく、新ブランドを前面に押し出した展開は今回が初めてとなる。「Atlr.72」を冠した商品第1弾として、フィンランドのフードテック会社ソーラー・フーズが開発した微生物タンパク質「ソレイン」を一部使用した、月餅とアイスクリームサンドイッチを、シンガポール都心部の商業施設2カ所において期間限定で販売する。

「ソレイン」は二酸化炭素(CO2)を栄養源とする微生物タンパク質で、持続可能で栄養価の高い食材として注目を集めている。シンガポール食品庁(SFA)は2022年9月、世界で初めて「ソレイン」の輸入・製造・販売を認可した。今回限定販売を開始した月餅とアイスクリームサンドイッチの素材に、バターや乳タンパクの代わりとして「ソレイン」を使用し、味にコクや厚みを出している。また、ゼラチンの代わりに寒天を使用するほか、砂糖の使用を抑えてミネラルやオリゴ糖が含まれる甜菜(てんさい)糖を使用するなど、健康や環境に配慮した素材を使用すると同時に、味も追求した。

写真 微生物タンパク質「ソレイン」を一部素材として使用した月餅(味の素提供)

微生物タンパク質「ソレイン」を一部素材として使用した月餅(味の素提供)

味の素はこうした「グリーンフード」事業を、ヘルスケア、フード・ウェルネス、ICT(情報通信技術)と並ぶ4つの成長領域の1つと位置付けている。小澤氏は「食品に携わるグローバル企業として、食と農業が与える環境負荷の削減は大きなテーマだ」と強調した。グリーンフード事業の展開拠点としてシンガポールを選択した理由として、「600万人弱という人口のため、マーケットからのフィードバックが得やすい。また、新しいモノへの感度が高く、食や旅行など、生活を彩るために積極的にお金を使う」と指摘した。また、「フードテックへの政府のバックアップが充実しているため、スタートアップが集積しており、観光拠点としてもアジアだけでなく世界中から人々が集まっている」と述べた。新規設置を検討している店舗では、食品だけでなく、食シーンを彩る食器などの日本の伝統工芸品や生活雑貨などの紹介も予定している。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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