米運輸省、自動車の新燃費規制の最終規則発表、2031年モデルは50.4mpg(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月17日 0時10分
米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は6月7日、「2027年モデル以降の乗用車と小型トラック(ライトデューティービークル:LDV)の企業平均燃費基準(CAFE:Corporate Average Fuel Economy Standards)と、2030年モデル以降の大型ピックアップトラックとバン(HDPUV)の燃費基準」の最終規則を発表した。技術的かつ経済的な実行可能性を考慮し、ほかの自動車関連規制(注1)の影響や国内のエネルギー保全の必要性を念頭に置いた上で、2023年7月に発表した規則案に寄せられたパブリックコメントなどを加味するかたちで策定した(2023年8月1日記事参照)。
最終規則では、2027~2031年モデルのLDVのCAFE基準値を定め、最終年の2031年時点で1ガロン(約3.785リットル)当たり50.4マイル(50.4mpg、約81.11キロメートル)を設定した(添付資料表1参照)。ベースラインとなる2026年時点の46.9mpg(注2)を3.5mpg上回ったものの、規則案の55.7mpgからは緩和される結果となった。
LDVのうち乗用車は2031年モデルまで年間2%ずつの改善が要求されるが、小型トラックの2027~2028年モデルの改善率は0%に据え置かれ、2029~2031年モデルで年間2%ずつの向上が求められることとなった。電気自動車(EV)の開発、生産を進める中で、燃費は比較的悪いが売れ筋の小型トラックを生産する必要があるとするメーカーのコメントを反映したかたちだ。なお、NHTSAは法的に5年を超える基準値を設定できないため、2032年モデルに関しては、51.4mpgを拘束力のない暫定値として公表した。
また、2030~2035モデルのHDPUVに対する燃費基準は、規則案で定めた100マイル当たり2.638ガロンから緩和され、約8%増の2.851ガロンに設定された(注3、添付資料表2参照)。2030~2032年モデルで年間10%ずつ、2033~2035年モデルで年間8%ずつの向上が求められることになる。NHTSAは、LDV、HDPUVの新たな基準値が達成されれば、2050年までに全米で約700億ガロン(約2,650億リットル)の燃料削減が可能となり、車両寿命を通じてLDVの所有者は1台当たり639ドル以上、HDPUVは717ドル以上の燃料費を節約できると試算した。
2027年モデル以降も現行規則同様、基準超過分をクレジットとして5年を上限に繰り越せる「キャリーオーバー」や、3年を上限にクレジットを繰り戻せる「キャリーバック」、カテゴリー(乗用車と小型トラック)間でクレジットの交換が行える「トランスファー」、企業間での取引「トレード」が認められているが、基準値に達しない場合は罰金を支払う必要がある。罰金額は1ガロン当たりの未達分0.1マイルごとに17ドルとしており、該当車種の生産台数分に科す。また、従来どおり、空調効率の向上や、燃費の測定試験に反映されない「オフサイクル」技術の改善分もクレジットとして認めるが、空調効率の向上に伴うクレジットの対象から、バッテリー式電気自動車(BEV)を外すなど、温室効果ガス(GHG)基準の最終規則と足並みをそろえるかたちで一部変更を加えた。
今回の最終規則に関し、主要自動車メーカーを代表する米国自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「(当初の規則案で想定された基準値で発生すると想定される)罰金は環境面でのメリットや燃費向上にはつながらず、自動車メーカーの資本をEV(電気自動車)への移行に必要な巨額の投資から遠ざけるという愚かな結果になっただろう」と述べ、NHTSAとの交渉がメーカーの実情が理解されるかたちで調整されたと歓迎した。報道によると、現行規則の下では、全米の2024~2026年モデルの合計罰金額が15億ドルに達する可能性がある(ロイター6月7日)。
(注1)エネルギー省は2024年3月19日、電気自動車(EV)の電力量消費率(電費)をガソリン車の燃費に換算するために使用する石油等価係数(PEF)の値を改定する最終規則を発表(2024年3月28日記事参照)。翌20日には環境保護庁(EPA)が2027~2032年モデルの温室効果ガス(GHG)排出基準を含む最終規則を発表した(2024年3月26日記事参照)。
(注2)該当年のCAFE基準値の順守など、複数の条件を加味して算出された基準値。
(注3)HDPUVの燃費基準は、直接消費される燃料を測定して得られた100マイル当たりのガロン数を用いる。
(大原典子)
(米国)
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