米商務省、国際標準規格策定での輸出規制の緩和要件を明確化する暫定最終規則を発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月22日 11時50分
米国商務省産業安全保障局(BIS)は7月18日、国際標準規格策定での輸出管理規則(EAR)の緩和要件を明確化する暫定最終規則(IFR)を発表した。官報で即日公示され、有効となった。米国企業が国際標準規格の策定に参加しやすくすることで、グローバルな技術的リーダーシップの維持、確保を目指す内容となっている。
BISは、2019年に中国の華為技術(ファーウェイ)がエンティティー・リスト(EL)に掲載されて以降、同社や関連企業が参加する国際標準規格策定に米国企業の参加が妨げられているといった声を受け、規制緩和を図ってきた(注)。BISは2020年6月に、国際標準の改定・策定に貢献する目的ならば、規制品目リスト(CCL)に掲載されていない技術(EAR99)と、CCL上で反テロリズム(Anti Terrorism)規制のみがかかっている技術について、BISの許可なくファーウェイや関連企業に開示できるとするIFRを発表した(2020年6月22日記事参照)。一方で、同IFRでは標準化機関への参画に関する不確実性が完全には払拭されていないとの理由から、2022年9月に規則緩和の対象となる標準策定活動の範囲を明確化するなどの新たなIFRを発表した(2022年9月16日記事参照)。だが、同月の改定以降も「標準化機関での情報共有に関連する輸出規制とライセンス要件が米国企業の国際規格開発への参加を妨げ、冷え込ませ続けている」との懸念が示されていた。
今回発表のIFRはこうした流れに続くもので、BISの発表によると、改定内容は次の2点となる。
標準規格で官民協力という米国のモデルを正確に反映するよう、標準規格策定関連活動(standards-related activities)の定義の見直し。
標準規格策定関連活動のための特定の「ソフトウエア」と「技術」に対する輸出規制適用の明確化。
具体的には、標準規格策定関連活動として、製品や製造方法に関する一般的かつ反復的な使用、規則、ガイドライン、技術的特性またはその他の特性などを規定する文書の策定を例示し、さらに、こうした規格の開発、公布、改定、発効・再発効、解釈、実施などが標準規格策定関連活動に含まれるとした。
BISは今回の改定の目的として、国際標準化規格の開発・普及で米国のリーダーシップを譲り渡すことによる国家安全保障上の脅威が、先端技術を利用していない技術やソフトウエアを限定的にEL掲載者に公開するリスクをはるかに上回ると官報で記している。商務省で輸出管理を所管するアラン・エステベス次官はBISの発表で「国家安全保障への脅威となる環境が進化し続ける中、本日の規則制定は、米国が未来をかたち作る技術標準の最前線に立ち続けることを確実にするための極めて重要な一歩だ」と述べている。なお、BISは、今回の改定は重要技術の標準開発での米国のリーダーシップ強化を目的とした「重要・新興技術に関する国家標準化戦略(USG NSSCET)」の取り組みを支援する上で不可欠なものとも発表している。
BISは今回のIFRに対するパブリックコメントを募集する。コメントは連邦政府のポータルサイト(ID:BIS-2020-0017)からオンライン提出が可能で、提出期限は9月16日となっている。
(注)ELに掲載された企業に対しては、EAR対象品目の輸出・再輸出・国内移転(みなし輸出・再輸出を含む)が原則として禁止されるため、みなし輸出に該当するソフトウエアの開示なども制限される。
(赤平大寿)
(米国)
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