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バイデン米大統領、違法薬物対策で議会に少額貨物の通関制度改正を要請(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月2日 13時30分

米国のジョー・バイデン大統領は7月31日、フェンタニルなど医療用麻薬の違法な輸入の対策強化に向け、連邦議会に対して少額貨物の通関手続きが簡素化される特例制度(デミニミスルール)を改正する「摘発および根絶(Detect and Defeat)」提案を法案のかたちで可決するよう要請した。

米国では、デミニミスルールが悪用され、取り締まるべき薬物や強制労働を利用して製造された製品などが米国に違法に輸入されているのではないかと問題視されている。ホワイトハウスのファクトシートによると、同法案は違法薬物の輸入に対する罰則強化、違法薬物の輸入に悪用されるデミニミスルールの「抜け穴をふさぐ」ことを目的としたもの。現段階で提案の具体的な内容は明らかになっていないものの、連邦議会で提案されているアイデアの多くを取り入れたとしている。議会では、少額貨物の輸入に関する情報収集を強化する法案などが上下院に複数提出されている(2024年8月2日記事参照)。

国家安全保障省(DHS)が同日発表した、違法薬物の輸入対策に関するファクトシートによると、同法案が成立した場合、DHSが所管する税関・国境警備局(CBP)は、少額貨物の輸入に関する追加書類・情報を輸入業者に要求し、違反者に相応の罰則を科すことができる。これら情報収集・蓄積を通じてリスク分析・違法な輸入パターンの特定を行い、デミニミスルールの悪用の効果的な取り締まりを図る。また、貨物の検査の設備や体制強化のため、通関の手数料を引き上げるとしている。

また、バイデン大統領は同日、違法薬物対策強化に関する大統領覚書に署名した。バイデン大統領は覚書で、関係省庁に対して違法薬物に関する情報収集や省庁間連携・協力を強化し、違法薬物の製造や輸入対策の取り組みを強化するよう指示した。

米国では、薬物の過剰摂取による健康被害が社会問題となっている。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、2023年の薬物の過剰摂取による推定死者数(暫定値)は10万7,543人で、うち75%(8万1,083人)がフェンタニルなどの過剰摂取を原因とするものだった。

2024年11月の米国大統領選挙に向けても、違法薬物対策は政治的争点の1つとなっている。共和党が7月に発表した2024年の政策綱領では、バイデン政権の不法移民や違法薬物の対策を不十分だと批判し、共和党が大統領選挙で勝利・議会上下院で多数派を獲得した場合に実行する政策の1つとして、「移民犯罪の蔓延(まんえん)を阻止し、外国の麻薬カルテルを解体し、ギャングの暴力を止め、凶悪犯罪者を収監する」を掲げた(2024年7月9日記事参照)。一方で、同月に発表された民主党の政策綱領草案では、バイデン政権下で「記録的な量のフェンタニルを押収し、共和党の無策に直面しながらも国境を管理した」などとして水際措置の実績を強調している(2024年7月17日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国)

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