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バイデン米大統領、東海岸港湾労働者組合側を支持、政府介入は行わず(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月3日 11時50分

米国のジョー・バイデン大統領は10月1日、米東海岸とメキシコ湾岸で港湾労働者が大規模なストライキに突入したことを受けて、雇用者側の米国海運連合(USMX)に対して新たな労働協約に向けて公正な交渉を促す声明を発表した。

バイデン大統領は声明で、「海洋運送業者は新型コロナウイルスのパンデミック以降、記録的な利益を上げている」と指摘し、「同期間中に港の機能を維持するため、自らを危険にさらしてきた労働者たちの賃金を大幅に引き上げるのは当然のことだ」と、労働者側への支持を表明した。外国船社を代表するUSMXに対し、「国際港湾労働者協会(ILA)との交渉のテーブルにつき、労働者の貢献に見合う給与を支払う公正な申し入れをするよう強く求めた」とも述べた。

米国東海岸の港湾労使交渉の基本協約が9月30日に失効し、両者は新たな労働協約の締結に向けた合意に至らず、ILAの組合員は10月1日から大規模なストに突入した。争点になっているのは、コンテナ荷揚げの自動化と賃上げだ。USMXは、ホワイトハウスからの働きかけを受けて9月30日、新たに6年間の労働協約で50%近い賃上げを提示したが、ILAのハロルド・ダゲット委員長は、組合は契約期間中に77%の賃上げを求めているとして拒否した(CNN10月1日)。両者の隔たりは大きいが、バイデン政権は「タフト・ハートレー法(注)」に基づく法的権限を行使してストを強制的に阻止するつもりはないとして、政府は引き続き介入しない姿勢を示している。

ILAは、米国東海岸とメキシコ湾岸の36港で働く4万5,000人の港湾労働者を代表し、全米の港湾荷役の半分近くを取り扱っている。これらの港湾では食品から医薬品、自動車まで幅広い貨物を取り扱っており、ストが長期化した場合には、あらゆる業界に深刻な影響を及ぼす懸念が高まっている。特に製造業では、消費・投資抑制の影響で受注が減り生産を縮小し在庫を減少させてきたこともあり(2024年8月6日記事参照)、部品不足による供給不足が懸念される。また、保存しにくいバナナやチェリーといった生鮮食料品などは、価格上昇につながる恐れもある(政治専門紙「ポリティコ」10月1日)。

こうしたことから、全米小売業協会(NRF)、全米製造業協会(NAM)、全米農業連盟(AFBF)など、多数の業界団体は政府が早急に介入するよう要請している。NRFは「わが国の経済回復の極めて重要な時期に、これほどの規模の混乱が生じれば、米国の労働者とその家族、地域社会に壊滅的な影響を及ぼすだろう」とし、政府の関与を求めた。

ストの影響がどの程度になるのかは、実施期間によって大きく左右される。米国サプライマネジメント協会(ISM)は、短期的には配送遅延や輸送コストの上昇が、長期化する場合にはインフレ率の上昇や輸入部品への依存度が高い自動車、電子機器、小売りなどでの混乱、港湾関連の雇用への影響が懸念される、と指摘している。

こうしたさまざまな影響が懸念される中、消費者に冷静な行動を呼びかける動きも見られる。ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事(民主党)は9月30日、港湾労働者がストを決行する可能性に備えて、多くの準備を進めてきたと説明した。ニューヨーク・ニュージャージー港は東海岸で最大の港でもあり、ホークル知事は、パンデミック当時のような供給不足を避けたいと述べ、消費者には食料品店に駆け込んで買いだめをする必要はないと説明した(CBSニュース9月30日)。

(注)米国の労使関係法で、連邦政府が仲介して団体交渉を調停する代わりに、交渉に要する80日間は労働者に職場への復帰を強制することができる。

(加藤翔一、樫葉さくら)

(米国)

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