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ERIA、東アジアの水素サプライチェーンの展望分析(中国、日本、韓国、オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポール、タイ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月1日 0時35分

東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)は7月16日、東アジアの水素サプライチェーンに関するレポート「Study on Demand and Supply Potential of Hydrogen Energy in ASEAN and East Asia」を発表した。同レポートは、水素サプライチェーン構築の社会経済への影響、水素生産に必要な技術、輸送コストなどを分析し、提言をまとめている。

ERIAによると、各国の需要や供給ポテンシャルを踏まえると、東アジアでは2040年までに、年間でグリーン水素が約900万トン、ブルー水素が約1,800万トン生産される可能性がある。水素エネルギーの活用は、各国のエネルギー安全保障を向上させるほか、将来の東アジアの炭素排出量(年間)を約3億5,800万トン、ASEANでは約2億5,800万トン削減すると見込む(2040年時点)。

一方、水素サプライチェーンを構築するには、2040年までに東アジアで年間最大2,630億ドル以上、ASEANでも820億ドル以上の投資が必要だ。また、投資の7割以上は水素の輸送・貯蔵インフラに、2割は水素生産施設に、残りは発電設備や水素充填(じゅうてん)ステーションなどに充てられる。こうした巨額の資本投資を実現するには、政府の財政支援も必要だ。具体的には、2023~2030年に東アジアで累計128億ドル(注1)、ASEANで7億5,900万ドルの財政支援が必要となるという。

効率的な生産技術と供給網の確立が重要

同レポートによると、水素は化石燃料、水、バイオマスなどから、(1)天然ガスの改質、(2)低品位炭のガス化、(3)水電気分解などの手法で生産される。特に(3)の水電気分解の中でも、現時点でまだ商業化されていないが、「固体酸化物電解セル(SOEC)電解槽」によるグリーン水素の生産効率が非常に高い。水素生産コストを大きく削減するためにも、同技術の早期商業化が期待される。

また、ERIAは、各国の需要や供給ポテンシャルなどを踏まえ、東アジア諸国は水素の需要国(中国、日本、韓国、シンガポール、タイ)と供給国(オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム)に分けられると分析する。また、各国間で想定される水素の輸出入量や距離、コスト、各港湾施設のキャパシティーなどを基に計算(注2)した結果、域内の最適な水素供給網を次のとおり分析する。

中国:ブルネイ、マレーシア、ベトナムから輸入
日本:インドネシアとオーストラリアから輸入
韓国:インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドから輸入
シンガポール:インドから輸入
タイ:インドから輸入

一方、長距離で大量の水素を効率的に輸送するには、液化水素として運搬する必要があるため、各国は大型の液化水素運搬船や水素貯蔵タンクの整備などが必要だとしている。

(注1)ERIAは、東アジアで必要となる補助金総額は同地域全体のGDPの0.039%にすぎないため(2021年時点)、財政負担は可能なレベルと分析する。

(注2)ERIAは、事業計画や経営戦略の策定で最適な手法を分析するための手法として活用される「線形計画法」を適用して調査。

(田口裕介)

(中国、日本、韓国、オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポール、タイ)

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