6月の米個人消費支出、インフレ率はわずかに低下、労働市場の減速に伴い所得環境も悪化(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月29日 14時40分
米国商務省は7月26日、6月の個人消費支出(PCE)を公表した。インフレ率がわずかに低下するとともに、雇用者報酬の伸びは縮小し、貯蓄率は低位にとどまるなど、今後のインフレ圧力の低下を示唆する内容も含まれている。
所得関連では、個人所得が名目ベースで前月比0.2%増(前月0.4%増)と市場予測の0.4%増を下回った。また、4、5月の数値がそれぞれ0.2%増(改定前0.3%増)、0.4%増(改定前0.5%増)に下方修正された。6月の数値の内訳をみると、雇用者報酬が0.3%増(寄与度0.2ポイント)と前月(0.6%増、0.4ポイント)から大きく低下したほか、利息・配当も0.1%増(0.0ポイント)と前月(0.4%増、0.1ポイント)から低下した(添付資料表1参照)。
税を除いた可処分所得は名目ベースで0.2%増、実質ベースで0.1%増とともに前月(いずれも0.4%増)から低下した。名目可処分所得の使途をみると、消費支出が0.3%増(寄与度0.3ポイント)、利払い費が0.2%増(0.0ポイント)、貯蓄が3.0%減(マイナス0.1ポイント)となっている。数値の改定に伴い、貯蓄は5カ月連続のマイナスとなった。また、貯蓄率も3.4%と極めて低い水準で、家計の余力が乏しい様子が浮き彫りになっている。
名目個人消費支出は前月比0.3%増だった。財部門(寄与度0.02ポイント)では、レクリエーショングッズ(0.05ポイント)、家具(0.03ポイント)、食品(0.03ポイント)、衣料品(0.02ポイント)などが押し上げに寄与する一方、自動車(マイナス0.12ポイント)、ガソリン(マイナス0.06ポイント)が押し下げに寄与し、全体ではほぼ横ばいとなった。サービス部門(0.27ポイント)では住居(0.09ポイント)、金融・保険(0.05ポイント)などが押し上げに寄与した。なお、実質ベースでの個人消費支出は前月比0.2%増で、押し上げ・押し下げに貢献した項目は名目支出とほぼ同様だった(添付資料表2参照)。所得環境の弱含みにもかかわらず、消費支出は堅調に推移しているが、足元では全米小売業協会(NRF)から、小売店のセールに合わせた学用品の購入の前倒しなど、消費者の節約志向の継続を示唆する報告もなされており、数値上の堅調さが需要の前倒しによるのか、消費の底堅さを示すものかは判然としない。
物価関連では、PCEデフレーターは前年同月比2.5%増と前月(2.6%増)からわずかに低下し、前月比では0.1%増となった。いずれも市場予想と一致した。食料・エネルギーを除くコア指数の伸びは前年同月比2.6%増(前月2.6%増)、前月比0.2%増(0.1%増)だった。前年同月比の内訳では、住居費(5.2%増)、金融・保険(5.6%増)などサービス部門(3.9%増)が前月より若干低下しつつも引き続き押し上げ要因となっている(添付資料表3参照)。一方、財部門(0.2%減)は2カ月連続の低下で、自動車(3.6%減)、家具(3.3%減)など耐久財が押し下げ要因となった。
6月はインフレ率のわずかな低下や、労働市場の減速を背景とした所得環境の悪化など、インフレ圧力低下の継続を示唆する内容となった。7月17日には、連邦準備制度理事会(FRB)のクリストファー・ウォラー理事が「政策金利の引き下げが正当化される時期に近づいていると確信している」と述べるなど、連邦公開市場委員会(FOMC)の関係者からも利下げに向けた発言が複数見られており(ブルームバーグ7月17日)、今回の内容はこうした見方を支持するものとなりそうだ。
シカゴマーカンタイル取引所(CME)の調査では、9月のFOMCまでに1回以上の利下げを想定する者が100%となるなど、市場関係者の間では9月利下げが規定路線となりつつある。
(加藤翔一)
(米国)
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