第6回EU米国貿易技術評議会、協力継続を強調も実質的な成果見られず(EU、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月11日 10時25分
EUと米国は4月4~5日、EU米国貿易技術評議会(TTC)の第6回閣僚会議をベルギーのルーベンで開催し、共同声明を発表した(プレスリリース)。人工知能(AI)、半導体、第6世代移動通信システム(6G)分野などでの協力強化に一定の成果がみられた。一方で、EU・米国間の鉄鋼・アルミニウム製品の関税問題(2024年1月4日記事参照)や、米国インフレ削減法のクリーンビークル(注)税額控除でのEUの扱い(2024年2月1日記事参照)については、具体的な進展はみられなかった。EUと米国はともに協力関係の継続を強調するものの、6月の欧州議会選挙や11月の米国大統領選挙を前に、次回TTCの開催予定は発表されていない。現地報道では、米国大統領選挙の結果次第では、今回が最後のTTCになるとの見方も示されている。
今回の成果として、EUと米国は安全で信頼できるAI技術を推進すべく、リスクに基づくアプローチを支持することを再確認。ベンチマーク、潜在的リスク、将来の技術傾向などに関する情報交換など協同関係を強化すべく、EUのAI局(2024年2月1日記事参照)と米国AI安全研究所(2024年2月9日記事参照)の対話枠組みを設置することで合意した。半導体に関しては、安定供給のための強靭(きょうじん)なサプライチェーン構築に向けた調整継続で一致。供給不足の早期警告や補助金の透明性確保に関する既存の取り決めを3年間延長するとともに、EU半導体法(2023年8月2日記事参照)や、米国のCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法、2024年3月22日記事参照)に基づいて実施される補助金の相乗効果の創出に向け取り組むことで合意した。
また、中国を念頭にした非市場経済的慣行(2024年4月2日記事参照)については、汎用(はんよう)性の高い旧世代半導体の過度の供給依存への懸念を共有し、EUと米国で情報共有を強化し、必要に応じて対応策を検討するとした。他方で、医療機器分野に関しては、中国に直接的に言及し、中国の非市場的な政策や慣行に対する懸念を共有する国々とともに、中国に懸念を伝えたと明かした。
産業界からは、TTCの課題を挙げつつ、継続を求める声が上がっている。在EU米国商工会議所(AmCham)は新興技術に関する長期的な目標に向けた取り組みを評価しつつ、当初期待された貿易障壁の実質的な解消は実現していないと指摘。今後も両者の経済連携を進める必要があるとして、TTCを常設の枠組みにすべきとした。また、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)と合衆国商工会議所はTTCの継続を支持しつつ、今後は経済安全保障の分野でより具体的な成果を上げるべきとした。
(注)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。
(吉沼啓介)
(EU、米国)
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