フランス、新型原子炉EPRを稼働へ(フランス)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月10日 9時0分
フランス電力(EDF)は9月2日、北西部ノルマンディー地域圏フラマンビル原子力発電所の3号基について、フランス原子力安全局(ASN)から核分裂の連鎖反応を始めるための諸作業の許可を得たと発表した。
フラマンビル3号基は、フランス原子炉製造フラマトム(旧アレバ)が開発した、フランス国内初の第3世代欧州(進展型)加圧水型炉(以下、EPR)で、1,600メガワット(MW)の設備容量を持つ。2024年5月の燃料装荷後、稼働に向けて出力0.2%の状態で安定した核反応を確認するなど準備を進めてきたが、今後さらに数々の実験を実施しつつ出力を段階的に引き上げ、出力25%に達した時点で送電網に接続する予定だ。2024年の「秋の終わり」までに接続できるとしている。
フラマンビル原発のEPRは2007年に着工された。原子炉圧力容器に関わる鋼材の組成異常や配管溶接部の欠陥など複数の問題で工期が長引き(2019年11月12日記事参照)、当初の完成予定だった2012年から12年遅れでようやく稼働にこぎ着けた。総工費は132億ユーロと当初予測の33億ユーロから4倍に膨らんだ。
フラマンビル3号基は、国内57基目の原子炉となる。エマニュエル・マクロン大統領は2050年でのカーボンニュートラル達成に向け、EPRを改良した6基のEPR2(改良型欧州加圧水型炉)建設を進めると同時に、8基の追加建設についても検討している(2022年2月17日記事参照)。2023年6月に「既存原発の隣接地での原子炉新設に関わる手続き加速と既存原発の運営に関わる法」を施行し、EPR2建設に向けた法整備を行ったほか、2023年7月にEPR2建設予定地としてノルマンディー地域圏のパンリー原発、オー・ド・フランス地域圏のグラブリーヌ原発、オーベルニュ・ローヌ・アルプ地域圏のビュジェイ原発を選定した。2035年までに、パンリー原発でEPR2の1号基を稼働させる計画だ。6基のEPR2の建設費用は、すでに当初予測の517億ユーロを大幅に超えるものとみられている。
なお、EDFは同日、2024年通年の原子力発電量が340~360テラワット時(TWh)になると発表した。従来の予測値である315~345TWhから上方修正した。既存原子炉における応力腐食割れの修復工事や保守作業が順調に進んだこと、今夏に猛暑など異常気象が見られなかったことで、原子炉の順調な稼働が可能となったと説明した。政府は2023年11月に発表した「エネルギー・気候戦略」の中で、原子力発電量を2030年までに360~400TWhに引き上げる目標を掲げている。
(山崎あき)
(フランス)
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