米国でロシア産ウラン輸入禁止法が成立、8月から輸入禁止に(米国、ロシア、ウクライナ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月17日 1時0分
米国のジョー・バイデン大統領は5月13日、「ロシア産ウラン輸入禁止法(H.R. 1042)」に署名し、同法が成立した。ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は同日、同法について、原子力発電におけるロシアへの依存度を低減し、最終的には撤廃することによって、米国のエネルギー安全保障および経済安全保障を強化するものだとの声明を発表した。
同法の成立により、ロシア政府またはロシアの事業体が生産した低濃縮ウランの米国への輸入が、8月11日から禁止される。ただし、原子炉または米国の原子力発電会社の継続的な操業を維持するにあたり、エネルギー長官が、低濃縮ウランの代替可能な供給源がなく、ロシアからの輸入が国益にかなうと判断した場合、一定の輸入量の制限の下、2028年1月1日までは特別に輸入が許可される(注)。2028年以降は、例外規定はない。
米国政府の発表によると、同法の制定は2023年12月に発表した、安全・安心で信頼できる世界的な原子力発電サプライチェーンの構築に向け、ロシア産ウランを使用せずに濃縮ウラン生産能力を強化する、日本、カナダ、フランス、英国との連携に基づくものだしている(2023年12月15日記事参照)。エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は「わが国のクリーンエネルギーの未来は、ロシアからの輸入に依存しない」との声明を発表している。
国務省も5月14日に声明を発表し、ロシアからウランを輸出する同国の国営原子力エネルギー企業ロスアトムは核兵器にも関与しているとし、「ロシアのウラン輸出による収益は、ロスアトムを潤し、ロシアの核兵器プログラムを強化する危険性がある」と同法の意義を強調した。その上で、ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月以降、米国は35以上のロスアトムの子会社や関係者を制裁対象としてきたと述べた(2023年7月24日記事、2024年5月2日記事参照)。米国はロシアへの制裁を断続的に行っており、財務省外国資産管理局(OFAC)は2024年5月14日にも、制裁回避のスキームに関与したとしてロシアの個人1人とロシアに拠点を置く企業3社を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定している。
(注)特別に輸入が許可されるのは、2024年は47万6,536キログラム、2025年は47万376キログラム、2026年は46万4,183キログラム、2027年は45万9,083キログラムまで。
(赤平大寿)
(米国、ロシア、ウクライナ)
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