2023年の対米直接投資残高は4.4%増、日本が5年連続で国別首位を維持(米国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月25日 13時0分
米国商務省は7月23日、2023年末時点の米国の対内直接投資残高が前年比4.4%増の5兆3,941億ドルになったと発表した。外国からの直接投資残高は前年末に比べ2,270億ドル拡大し、低水準にとどまった前年の伸び率(2.0%増)を上回った。国別では5年連続で日本が最大の投資元となっており、化学、輸送機械、コンピュータ・電子製品、卸売りなどの主要業種において残高の増加がみられた。
投資元上位5カ国では、日本が前年比2.9%増の7,833億ドルで首位となり、次いでカナダ(7,496億ドル)、ドイツ(6,578億ドル)、英国(6,356億ドル)、フランス(3,705億ドル)の順位だった(添付資料図参照)。英国とドイツの順位が逆転した。また、日本の増加幅が221億ドルにとどまったのに対し、カナダとドイツはそれぞれ836億ドル、463億ドルと大きく増加し、日本との残高差は年々縮小しつつある。業種別では製造業が全体の41.2%を占め、最大の投資先となった。製造業のなかで最も投資残高の多い化学が155億ドル増の7,667億ドル、これに次ぐ輸送機械が73億ドル増の2,290億ドルでともに増加した。非製造業では、最大の金融・保険業が46億ドル減の5,738億ドルに減少した一方、2番目に多い卸売業は404億ドル増の5,412億ドルに拡大した。
日本からの直接投資残高の内訳をみると、約2割を占め最大の化学の投資残高が62億ドル増の1,617億ドルとなった(添付資料表参照)。同業種では、2023年に武田薬品工業による米バイオ医薬品企業ニンバス・ラクシュミ買収(2月完了、60億ドル)や、アステラス製薬による同アイベリック・バイオ買収(7月完了、53億ドル)などの大型買収が行われたほか、富士フイルムのウィスコンシン州、カリフォルニア州拠点への設備投資(約2億ドル)などが発表された。
輸送機器の投資残高は3億ドル増の666億ドルとなった。自動車関連では、2023年にトヨタ紡織のケンタッキー州での新工場建設(2億2,500万ドル)や、日立アステモの同州生産拠点の電動化に向けた拡張投資(1億5,300億ドル)などが明らかになった。前年に続き、車載バッテリーに関連した投資も複数みられた。大日本印刷がノースカロライナ州に2億3,300万ドルを投じてバッテリーパウチ製造工場の建設を発表したほか、トヨタがミシガン州の研究開発本部に電気自動車(EV)バッテリー試験施設を増設するなどの動きが続いた。
その他の製造業では、コンピュータ・電子製品の投資残高が22億ドル増の438億ドルに拡大した。同業種では、レゾナックがカリフォルニア州シリコンバレーに半導体後工程の研究開発(R&D)拠点の新設を発表するなどの動きがみられた。
非製造業においては、日本からの投資残高が最大の卸売業が79億ドル増の1,416億ドル、これに次ぐ金融・保険は45億ドル減の1,006億ドルとなっている。
米国内では、2022年に成立したインフレ削減法(IRA)、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づく連邦補助金や税額控除など投資インセンティブの執行が進むのに伴い、製造業を中心とするグリーンフィールド投資が活況を呈する。他方、近年の資本コスト上昇や企業買収審査の厳格化などを背景に、米国企業を対象とするクロスボーダーM&Aは低調な状況が続いており、2023年の対米投資直接投資残高の近年としては比較的低い伸びにつながったとみられる。米国は11月に大統領選挙を控え、その結果次第では、上記の投資インセンティブや金利水準、買収審査といった投資環境に変更が生じ得る。大統領選挙の結果が日本をはじめ外国企業の対米投資にどのような影響を及ぼすのか、今後の動向が注視される。
(米山洋)
(米国、日本)
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