米エネルギー省、次世代原子炉向けウラン燃料の国内供給体制強化へ(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月22日 0時50分
米国エネルギー省(DOE)は10月17日、次世代原子炉に必要な新型燃料、高純度低濃縮ウラン(High-Assay Low-Enriched Uranium、以下HALEU)(注)の国内供給体制構築に向け、濃縮サービスを提供する4社を選定したと発表した。この措置はバイデン政権のインフレ削減法(IRA)に基づくもので、米国内のHALEU生産から供給までの一連の流れ(供給チェーン)を強化することを目指している。
この選定は、DOEが2024年1月に行った提案要請(RFP)に基づいている(2024年1月11日記事参照)。ナトリウム冷却型高速原子炉と溶融塩エネルギー貯蔵システムを含む、米国で開発中のほぼ全ての次世代原子炉は、HALEU燃料に依存しているとされる。
米国を含む22カ国は、2050年までに原子力発電容量を3倍にするとの宣言を発表した(2023年12月6日記事参照)。HALEUを燃料とする次世代原子炉は、現在の原子炉に比べ極めて高い環境性能と効率を備えているのがメリットといわれ、次世代原子炉の導入に必要とされるHALEUは米国に本拠を置く事業者による商用販売はなく、ロシアとその同盟国に依存しており、国内のサプライチェーンの確保が急務となっていた(2022年8月15日記事参照)。そのため、前記のRFPでは、濃縮および貯蔵活動を米国本土内で行い、環境保護のための法律を順守するということを条件としていた。
今回選ばれた4社(ルイジアナ・エナジー・サービシズ、オラノ・フェデラル・サービシズ、ジェネラル・マター、アメリカン・センチュリー・オペレーティング)は、今後HALEUの生産・貯蔵に関する具体的な契約を結ぶことになる。契約期間は最長10年で、各社に最低200万ドルが支払われる。状況に応じて、最大27億ドルまでの予算が割り当てられる可能性がある。DOEが調達するHALEUは、次世代原子炉開発を手掛ける米国テラパワーや、テラパワーと小型モジュール式原子炉(SMR)技術開発を行うX-エナジーなどが開発中の次世代原子炉の支援に使われる予定だ。
DOEのジェニファー・グランホルム長官は「この取り組みは、クリーンで信頼性の高い電力供給に不可欠な次世代原子炉の導入を後押しするものだ」とコメントした。
バイデン政権は、2050年までのネットゼロ排出経済実現に向け、原子力発電を重視。今回の措置は、米国のエネルギー安全保障強化と原子力産業におけるリーダーシップ維持を目指す取り組みの一環と位置付けられる。
(注)高純度低濃縮ウラン(HALEU)は、U235(ウラン同位体の1つで広く原子力発電に利用される)の濃度が5~20%のものを指す。
(藤田ゆり)
(米国)
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