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現職サイード大統領が得票率90.69%で再選、投票率は28.8%にとどまる(チュニジア)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月15日 0時50分

チュニジア大統領選挙の第1次投票が10月6日に行われた。翌日10月7日には独立高等選挙委員会(ISIE)が公式暫定結果を発表し、現職のカイス・サイード大統領(66歳)が得票率90.69%に当たる243万3,954票を獲得し、再選を決めた。他の2候補、元国会議員で実業家のアヤチ・ザメル氏と左派汎アラブ政党「エシャーブ運動」の事務局長ズハイル・マグザウイ氏はそれぞれ7.35%、1.97%の得票率にとどまり、選挙前の予想どおり現職サイード大統領の圧勝となった。任期は2029年10月までの5年間となる。

一方、投票率は28.8%にとどまり、前回2019年の第1次投票の45%、2011年のジャスミン革命(注)後初の2014年の第1次投票の64%(2019年10月2日記事参照)に比べ大幅に低下した。10月6日にISIEによって発表された年齢層別暫時的投票率によると、18~35歳は6%と極めて低く、36~60歳で65%、60歳以上で29%となり、若者の政治離れと現政府への深い不信感が顕著に表れる結果となった。

今回の選挙は、2022年の憲法改正(2022年7月28日記事参照)により2014年憲法で制定された混合議会制(大統領は外交と安全保障に関して権限を有し、行政の長は首相)から、大統領が広範な権限を持つ大統領制へと政治体制が移行した後の初の大統領選挙となった。2023年2月以降、野党勢力の指導者が「国家安全に対する陰謀」の罪と称して相次いで投獄され、また当初17人だった立候補者のうち14人が不正行為の疑いでISIEから立候補を却下され、そのうち3人の候補者の復帰を命じた裁判所の決定に従うことを拒否したため、最終的に立候補を承認されたのは3人にとどまった。指導者らが投獄されている野党勢力、チュニジアおよび外国のNGO、また各種海外メディアは「カイス・サイードを支持するようにゆがめられた」投票だと批判している。「2011年以来初めて、EUの監視員は投票に同伴することが許可されなかった」と、ルモンド紙は指摘している。

政府系通信社チュニジア・アフリカ・プレスは、サイード大統領が再選確実の際のメディアへの声明で、「国民の願望を実現し、国を築き上げ、腐敗者、懐疑論者、陰謀者を一掃するために努力する」と約束した、と伝えている。

(注)青年の焼身自殺事件に端を発する反政府デモがチュニジア全土に拡大し、軍部の離反により当時のザイン・アル=アービディーン・ベン=アリー大統領がサウジアラビアに亡命、23年間続いた政権が崩壊した事件。ジャスミンはチュニジアを代表する花。この民主化運動はチュニジアにとどまらず、エジプトなどほかのアラブ諸国へも広がり、数々の政変や政治改革を引き起こし「アラブの春」と呼ばれた。

(渡辺智子)

(チュニジア)

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