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米国から強制送還されたメキシコ移民に無料で公的医療を提供(メキシコ、米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月30日 10時15分

メキシコ政府は1月24日、夕刻の官報で政令を公布し、米国からの大量送還が懸念されるメキシコ国籍の移民に対し、3カ月間無償で医療サービスを提供する体制を翌日から導入した。具体的には、社会保険法が定める医療保険の現物支給分の恩恵を、米国から強制送還された移民に提供する。これにより、社会保険庁(IMSS)が運営する病院において、無償で診断、手術、入院治療、投薬などを受けることが可能になる。

IMSSの病院は、民間の雇用主、被雇用者本人、連邦政府が負担する掛け金により運営されており、通常、被雇用者としての登録がされていない場合は医療サービスを享受できない。今回は人道的配慮の緊急措置として、被雇用者登録がなされていなくても、3カ月の間(注1)は無償で医療の提供を受けることが可能になる。同措置の適用は2025年末までとされている。

メキシコでは医療保険の対象になっていないインフォーマル就労者などであっても、メキシコにおける住民登録があれば公的医療サービスを受けることができるが、住民登録証が必要なことと、医療サービスを受けられる病院や診療所が限られるという問題がある。2024年9月に発表されたアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(当時)の第6次年次教書によると、公立病院の全病床9万7,648床のうち、無保険者が使える病床は46.5%(4万5,485床)に過ぎない(注2)。大量送還により、医療インフラが不足する事態を考慮し、IMSSが所有する医療インフラを送還された移民にも開放することが狙いだ。

米国新政権に対しては慎重な姿勢

クラウディア・シェインバウム大統領の1月27日付記者会見によると、米国でドナルド・トランプ大統領が就任した1月20日から26日までの7日間で既に4,094人の在米移民がメキシコに強制送還され、その大半がメキシコ人だという。移民問題については、既にマルコ・ルビオ米国務長官とフアン・ラモン・デ・ラ・フエンテ・メキシコ外相を筆頭に作業部会が形成され、米国の税関国境取締局(CBP)とメキシコの国家移住庁(INM)の間のオンライン会合も行われ、いくつかの合意が形成されているという(大統領府記者会見録1月27日付)。

シェインバウム大統領は、移民の強制送還を巡る米国とコロンビアの間の対立(2025年1月27日記事参照)についても、米国を批判するような明確な発言はしておらず、2月1日にも発表される可能性があると報道されている米国の対メキシコ関税を回避すべく、慎重な姿勢を貫いている。シェインバウム大統領は、米国政府にメキシコ移民の人権への配慮を求め、人権侵害が起きた場合は国の尊厳を守り、適切に対処するとしつつも、強制送還された移民を受け入れるための施設を北部国境に設置している状況について、国民に対して説明している(大統領府記者会見録同上)。

(注1)3カ月の間に民間企業に雇用登録された場合、または個人事業主として自主的にIMSSに加入した場合は、その時点でIMSSの通常の保険対象者として切り替わる。

(注2)原則として、国立・州立病院やIMSSの無保険者向けの病院(IMSS-Bienestar)でしか医療サービスを受けることができない。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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