EU人権・環境デューディリジェンス法の妥協案をドイツ産業界は批判、NGOなどは歓迎(ドイツ、EU)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月27日 0時15分
EU理事会(閣僚理事会)が3月15日、企業活動による人権や環境への悪影響を予防・是正する義務を企業に課す企業持続可能性デューディリジェンス指令案の最終的な妥協案を承認したこと(2024年3月21日記事参照)を受け、ドイツのフーベルトゥス・ハイル労働・社会相〔社会民主党(SPD)〕は同日、コメントを発表。「(同指令は)欧州のすべての企業に公正な競争条件を生み出すものであるため、人権とドイツ経済にとって価値がある」と歓迎した(注)。
一方、ドイツの連立政権内にありながら同指令案に対して強く反対していた自由民主党(FDP)は3月15日、FDPのウェブサイトで「官僚主義の中止が必要」と題する記事を発表した。同記事では、FDP党首のクリスティアン・リントナー財務相の「われわれは官僚主義的(行政手続きの煩雑さなど)な要素がより少なく実務上有用な指令を望んでいたが、かなわなかった」、FDPのマルコ・ブッシュマン司法相の、デューディリジェンス(DD)義務化の対象となる企業の範囲を縮小できたことなどは評価できるが修正は十分ではなかった、との意見を紹介した。
また、同指令案に反対し続けていたドイツ産業界(2023年12月21日記事)も3月15日、相次いで声明を発表した。主な声明は次のとおり。
ドイツ産業連盟(BDI):指令案が「欧州の競争力に対してさらなる打撃を与えると同時に、欧州経済における供給の安定と多元化の新たな妨げになる」など内容を批判したほか、今回の妥協案の承認手続きは「前例のない」方法と異議を唱えた。
ドイツ商工会議所連合会(DIHK):妥協案の承認手続きを「不透明」と批判。内容については、DD義務化の対象となる企業の範囲を縮小できた点は評価したが、企業負担は依然大きいとして、欧州議会選挙後に時間をかけて指令案を抜本的に見直すことが望ましかったとした。
ドイツ機械工業連盟(VDMA):DD義務化の対象企業の基準を大幅に引き上げても「中小企業には何の保護ももたらさない。その理由は、大企業は自社の取引先の中小企業にも同じ義務を課すからだ」と批判。
なお、貧困や不正根絶を目指す国際NGOのオックスファム(Oxfam)のドイツ支部は3月15日付の声明で、ドイツの労働組合やNGOが参加する「サプライチェーン法イニシアチブ(Initiative Lieferkettengesetz)」は3月20日付の声明で、当初より後退した内容でも妥協案が承認されたことを評価した。
(注)EU理事会での妥協案の採決では、10加盟国が採決を棄権した(2024年3月21日記事参照)。ドイツも採決を棄権し、その理由はFDPの反対だったという(公共放送「ARD」3月15日など〕。
(二片すず)
(ドイツ、EU)
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