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脱炭素へ規制と支援を本格化、IT大手も原発投資、ジェトロの環境エネルギー月例レポート(2024年10月)(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月11日 9時30分

ジェトロは、米国の環境エネルギー政策動向をまとめた2024年10月分の月例レポートを公表した。同レポートは、日本企業が米国の環境・エネルギー政策に関する動向を把握できるよう、毎月作成して特集ページに連載している。その概要をまとめると次のとおり。

まず、原子力に関する動きでは、バイデン政権は9月30日、パリセーズ原子力発電所(ミシガン州)の再稼働に向けて、総額最大28億2,000万ドルの財政支援を行うと発表した(2024年10月2日記事参照)。同時期に、米IT大手各社も原子力発電への投資を相次いで発表した。マイクロソフトは9月下旬、2019年に稼働停止したペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所1号機の再稼働を支援し、20年間の電力購買契約を締結した(2024年9月24日記事参照)。アマゾンは10月16日、データセンターへの電力供給を目的に小型モジュール炉(SMR)の建設への投資を発表。グーグルも同月14日、SMRベンダーのカイロス・パワーと電力購買契約を締結した(2024年10月17日記事参照)。バイデン政権は、2050年までのネットゼロ目標達成に向け、原子力エネルギーの活用を重視している。

次に、石炭火力発電所に関する動きについては、10月16日には米連邦最高裁判所が、米環境保護庁(EPA)の火力発電所炭素排出規制の差し止め請求を却下した。この規制は、EPAが2024年4月に最終化したもので、2039年以降も操業を続ける石炭火力発電所に対し、2032年までに二酸化炭素(CO2)排出量を90%削減する技術〔炭素回収・貯留(CCS)など〕の導入を義務付けている(2024年5月8日記事参照)。これに対し、共和党主導の25州政府と電力会社・業界団体は、規制の執行停止を求めて提訴。しかし最高裁は、期限までに時間的猶予があり、差し迫った損害はないと判断し、差し止め請求を却下した。これにより、連邦控訴裁判所での訴訟の決着まで、EPA規制は有効となる。

炭素取引市場に関しては、米商品先物取引委員会(CFTC)は9月20日、自主的炭素市場(Voluntary Carbon Markets:VCM、注)で取引される炭素クレジット(VCC)の運用に関する最終ガイダンスを承認した。ホワイトハウスは5月下旬、VCMの発展に向けた措置を発表していた(2024年5月30日記事参照)。今回のガイダンスでは、クレジットの品質確保や第三者による検証、取引の透明性確保などの基準を定め、取引市場の信頼性向上を図る。

企業動向では、住友商事グループが10月15日、バージニア州で太陽光・蓄電プロジェクトを展開するCEPソーラーとジョイントベンチャー(JV)の設立を発表。同JVは1.5ギガワット(GW)超の太陽光発電・蓄電などの再エネプロジェクトを建設、市場展開する計画で、2025年後半の着手を目指している。

同レポートではそのほか、米国内外の主要企業の最新動向も併せて紹介している。なお、世界の環境・エネルギー政策についてのページから動向情報が随時確認できる。

(注)企業などが再生可能エネルギー導入や植林などを行うことで削減・吸収した温室効果ガス(GHG)の量に応じて「炭素クレジット」を発行し、それを自主的に取り引きする民間主導の炭素市場のこと。

(藤田ゆり)

(米国)

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