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米小売り大手の決算、大型セールや値下げが販売拡大に寄与、消費者にインフレ疲れの兆候(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月23日 13時0分

米国小売り大手のターゲットは8月21日、2024年第2四半期(2024年5~7月期)の決算を発表し、純売上高が前年同期比2.6%増の250億2,100万ドルとなった。米国の既存店売上高は前年同期比2.0%増と、5四半期ぶりに増加し、金融業界の予想(1.15%増)を上回った。7月に開催されたアマゾンの大規模セール「アマゾン・プライムデー」に対抗するため、同社が独自のセールイベントを実施したことや、顧客の購入頻度が高い5,000品目を値下げした取り組みが買い物客を引き寄せた。同社のブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は、顧客は値下げに好意的に反応しており、同四半期の来店客数の増加に貢献したと説明。これまで販売が低調だった衣料品などの裁量品の売り上げも改善したが、これには新学期商戦による季節要因が後押しになったもようだ(CNBC8月21日)。通期の既存店売上高の見通しについては、前年比横ばいから2.0%増になる見方を維持しているが、景気の不透明感を理由に、成長率は同範囲内の下限にとどまる可能性が高いとした。

また、米国小売り大手ウォルマートが8月15日に発表した2024年第2四半期(5~7月期)では、純売上高が前年同期比4.7%増の1,677億6,700万ドルで、営業利益も8.5%増の79億4,000万ドルだった。好調な販売を反映し、第3四半期(8~10月期)の売上高は3.25~4.25%増、営業利益は3.0~4.5%増と見込み、通期の売上高見通しも上方修正した。

同社によると、米国の事業では、ウォルマートが戦略として揚げる「顧客価値(Value Proposition)」により、高所得世帯を含む全ての所得層でシェアが拡大​​し続けていることが販売増につながったと述べた。同社では売上高の約半分以上を食品が占めるとともに、従来のスーパーマーケットよりも食品価格が約25%安く設定されており、こういった低価格戦略がウォルマートの優位性を高めているとみられる。また、消費者のインフレ疲れに応じて、7,200品目で値下げを実施したことも客足を押し上げた(CNN8月15日)。

景気の先行きを巡って不透明感が高まる中、大手小売業者の決算からは、消費者が生活必需品の購入を重視し、より安価に購入できるセール品を買い求める傾向が顕著になっていることを示唆している。このほか、バンク・オブ・アメリカによると、ディスカウント店での消費は2022年7月以降、小売り全体の支出を上回るペースで伸び続けている。ディスカウント店を運営するTJXが発表した第2四半期(5~7月期)では、既存店売上高が前年同期比4%増と好調な業績を受け、通年の利益と売上高見通しをそれぞれ引き上げた。

一方、百貨店では、ネット通販などの競争激化で売り上げが伸び悩んでおり、メイシーズの純売上高は前年同期比3.8%減の49億ドル3,700万ドルと、市場予想に届かなかった。消費者が慎重姿勢を強めていることから、通期の既存店売上高の見通しは1.5%減~横ばいから、0.5~2.0%減に下方修正した。

市場調査会社イプソスが実施した世論調査(注)によると、11月の大統領選挙に向けて、米国人の半数が「インフレ・物価上昇」を米国が直面する最重要課題に挙げており、物価高は依然として最大の関心事項となっている。カマラ・ハリス副大統領が発表した新たな経済政策(2024年8月19日記事参照)では、国民の生活コストの削減に重点を置き、インフレによる家計への負担軽減に対抗する方針を表明している。

(注)調査は8月2~7日に米国の18歳以上の成人1,604人を対象に行われた。

(樫葉さくら)

(米国)

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