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米ニューヨーク市、フェリー船団の使用燃料を再生可能燃料に転換へ(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月25日 0時25分

米国のニューヨーク市運輸局(NYC DOT)は10月21日、年間3,000万人が利用する同市最大の海上交通機関のスタテン島フェリーの船団(10隻)について、環境負荷の少ない「再生可能ディーゼル」燃料の使用へ転換する計画を発表した。再生可能ディーゼルは、廃棄動物性脂肪や使用済み食用油などを原料とする次世代燃料で、ニューヨーク市によると、従来のディーゼル燃料と比較して温室効果ガス(GHG)排出が大幅に少なく、二酸化炭素と窒素酸化物の排出量を最低でも60%削減できる可能性があるという。

ニューヨーク市は脱炭素化にコミットすることを表明しており、各部門で取り組みの具体化を進めている。中でも市のGHG排出量の28%を占める運輸部門では、公的部門で市の保有する全ての車両を2038年までにゼロエミッション化する条例(Introduction 279:注1)を定めるなど、さまざまな取り組み(注2)が進んでいる。ただし、市は大型車の電動化については未成熟なことから、電気自動車(EV)化が可能となるまでのつなぎとして、市の保有する大型車など向けの燃料として、再生可能ディーゼルの導入を図ってきたところだ。

市が運営する船舶に関しては、上記の陸上車両のような包括的な計画は見られないものの、2023年9月にガバナーズ島向け航路にハイブリッドフェリーを導入するなど、個別の取り組みを進展させてきた。今回の再生可能ディーゼル燃料のスタテン島フェリーへの導入はこうした動きの一環として、上記の陸上車両向けに導入した再生可能ディーゼル燃料を船舶にも適用することで、GHG排出量の削減を図るものとなっている。スタテン島フェリーシステムのGHG排出量は、市の運営する運輸部門での排出量の15%を占めることから、今回の取り組みは市の運輸部門のGHG排出量削減に向けた重要な一歩となりそうだ。

今後はまず、ジョン・J・マーチ号でテストを実施し、成功すれば、2025年末までに残り9隻への展開を進める。また、市経済開発公社所有のNYCフェリーについても、運航事業者のホーンブロワーと協力し、同燃料のテスト導入を開始する予定だ。

(注1)同条例では、(1)2025年7月1日以降に市が新規購入する全ての小・中型車両をゼロエミッション車にし、2035年7月1日までに市の保有する小・中型車両を完全電動化する、(2)2028年7月1日以降に市が新規購入する大型車両をゼロエミッションにし、2038年7月1日までに完全電動化する、(3)2035年7月1日までに市の保有するオートバイを全てゼロエミッションにするとの目標を定めている。

(注2)市管理サービス局(DCAS)の報告では、市が保有するEV車両が5,000台を超え、充電ポートも2,000基に達したことを発表。さらに、市の車両の70%以上に当たる2万1,000台以上がEVやハイブリッド車、ソーラーカー、バイオ燃料車など持続可能な燃料を使用する車両となっている。

(加藤翔一、藤田ゆり)

(米国)

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