エネルギー省、再エネ申請手続きの簡素化に向けた改定ガイドラインを発表(フィリピン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月25日 0時50分
フィリピンのエネルギー省(DOE)は6月14日、再生可能エネルギー(再エネ)開発事業の申請手続きに関するガイドラインを改定し、同手続きを簡素化したと発表した。新ガイドラインは6月25日から有効となった。本改定は、フィリピンにおける再エネビジネスへの参入を容易にすることで、同国の再エネ目標(注1)の達成を後押しすることを目的としている。
フィリピンで再エネ開発を行う事業者は、DOEとの25年間の正式契約を結ぶことが義務付けられている。従来、同契約を締結することなく、開発事業者が許認可手続きや初期の実現可能性調査(フィージビリティスタディ)などを実施することは認められていなかったが、今回の新ガイドラインにより、DOEから許可証(COA)を取得することで、正式契約前にこうした企業活動を行うことができるようになった。
COAの有効期限は、プロジェクトの種類によって異なる。具体的な年数は次のとおり。
バイオマス、地熱、水力、海洋、風力発電:3年間
浮体式太陽光発電(注2):2年間
陸上太陽光発電:1年間
ただし、DOEは、開発事業者が上記期間内に十分な取り組みを開始していないとみなした場合、COAを無効にすることができる。
またDOEは、免税輸入に関する優遇措置を受けるために必要な登録証明書(COR)の取得時期も拡大した。今般の改定により、開発事業者は従前の「正式契約へ署名した時点」だけでなく、「決算証明(注3)を提出した時点」でも、CORを取得することが可能になった。これまでは、実質的に正式契約署名時から10年間、優遇措置を受けられることが覚書回覧(DC No.2009-05-0008)で規定されていたが、各契約の段階移行に応じて柔軟に優遇措置を利用できるようになる(注4)。なお、本ガイドラインに合わせて、再エネ法の運用が規定された上記覚書回覧の修正が予定されており、現在DOEが修正案に対するパブリックコメントを募集している。
ラファエル・ロティリヤ・エネルギー相は、今回のガイドライン改定について「さらなる投資やイノベーションの育成、再エネプロジェクトの迅速な実施の促進が期待される」と述べた(2024年6月16日付「ビジネス・ミラー」)。また、同省のシャロン・ガリン次官は改定のもう1つの理由として、「フィリピンの再エネ産業が黎明(れいめい)期を過ぎたこと」を挙げた(2024年6月14日付「フィリピン・ニュース・エージェンシー」)。
現地報道によると、2024年3月時点で1,300以上のサービス契約がDOEと再エネ開発事業者との間で締結されており、その潜在発電設備容量は13万7,000メガワットを超える。内訳は、太陽光発電が503件、水力発電が428件、風力発電が276件、バイオマス発電が76件(燃料生成施設など電力以外の施設3件を含む)、地熱発電が35件、海洋発電が9件だ。
(注1)フィリピン政府は「ナショナル・リニューアブル・エネルギー・プログラム(NREP)2020-2040」において、国内エネルギー供給に占める再エネの比率を2030年までに35%、2040年までに50%とする目標を設定した(2023年10月27日付海外発トレンドレポート参照)。
(注2)浮体式太陽光発電とは、浮体と組み合わせて水上に設置する太陽光発電システムのこと。
(注3)地熱、水力、風力、海洋およびその他の再エネ資源では、開発事業者はDOEと「サービス契約」を締結する。同契約には商業運営に必要な資源量を確保可能か調査する「開発前段階」と、「開発/商業段階」が設定されている。一方、バイオマス、太陽光などの事前調査が不要な再エネ資源の場合は、「開発段階」と「商業段階」がある「運用契約」を締結する。決算証明は、各契約の段階移行に必要な資金提供を金融機関が確約したことを示す書類。なお、各段階はCOAの取得により可能な許認可手続きや初期調査の期間とは別に設定されている。
(注4)運用契約では、事業者は決算証明を提出したのち、DOEが発行する決算証明受領証を受け取ることで、商業段階に移行する。サービス契約では、決算証明、商業性申告(DOC)の提出後にDOEが発行する商業性確認証明書(COCOC)を受け取ることで開発/商業段階に移行する。
(西岡絵里奈、アセンシオ・アシュレイモイラ)
(フィリピン)
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