ケニアでボランタリー排出権市場が拡大、政策など課題も、世界銀行(ケニア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月9日 0時40分
世界銀行は4月30日、ケニア企業のための排出権市場ガイドブックを発表した。ケニアの排出権市場の概況とケニア企業が事業組成をするに当たっての可能性や課題についてまとめている。
ガイドブックによると、ケニアの排出権市場は、2011~2019年は年間の発行が200万~400万クレジット程度だったものが、2020年には650万、2021年にはさらにその倍の1,330万、2022年は1,310万クレジットが発行されるなど急速に拡大した。2022年のクレジット発行量を分野別でみると、56.1%が森林および土地利用、32.1%が家計・コミュニティー消費、11.2%が再生可能エネルギー、0.5%が持続可能な農業だった。
なお、2022年に発行されたクレジットのうち、約84%がボランタリー排出権市場によるものだった。ケニアは2022年、ボランタリー排出権市場で1,100万クレジットを発行、コンゴ民主共和国(2,400万クレジット)に次いで、アフリカで2番目に大きかった。ケニアが発行したクレジットは、エールフランス・KLM航空、アップル、BHP、デルタ航空、ケリング、ネドバンク、ネスプレッソ、ネットフリックス、シェル、ゼンレンなどが購入したとされるが、ボランタリー市場ゆえに価格などの詳細は明らかにされていないという。
2011年以降、ケニアで発行された排出権の99%以上は、(1)森林および土地利用、(2)家計・コミュニティー消費、(3)再生可能エネルギーにかかるプロジェクトだが、世界銀行は、ケニアでスマート農業やセメント製造での省エネや、コンポストやメタン回収などの廃棄物マネジメントでも、プロジェクト形成の可能性が高いとしている。
一方、課題として、排出権市場にかかるノウハウやキャパシティーの不足、案件組成にかかるファイナンスへのアクセスの難しさ、政策の不確かさ、価格変動、デベロッパーなどの不足を挙げた。特に政策面では、ケニア政府は2023年に気候変動法の修正案を成立させたが、承認プロセスや報告義務、土地の権利、排出権の所有権など多くの点で、より詳細な規制を策定していく必要があるとしている。税制面では、排出権売却の総収益の一定割合(土地利用に関するプロジェクトは40%、その他は25%)をコミュニティーに還元することが法案に記されているが、今後どのように税制が施行されていくのか、また今後も大幅な規制導入があり得るのかなど、不透明さが多く残ると指摘している。
(佐藤丈治)
(ケニア)
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