10月の米雇用統計、ハリケーンなどの影響で新規雇用が大幅低下、失業率は4.1%で変わらず(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月5日 13時40分
米国労働省は11月1日、10月の雇用統計を発表した。ハリケーンやボーイングのストライキといった一時的な要因が影響して、雇用者数が大きく落ち込むなどかく乱要因が多い内容となった。
就業者数(前月差36万8,000人減)、失業者数(15万人増)、労働参加率(62.6%、前月より0.1ポイント低下)を踏まえた失業率は前月(4.1%)と変わらず、市場予想とも一致した(添付資料表1、図1参照)。非自発的にパートタイムを選択している者などを加えた広義の失業率(注1)も7.7%と前月と同じだった。
非農業部門の雇用者数の伸びは1万2,000人増とハリケーン(注2)やボーイングのストライキ(2024年10月25日記事参照)の影響が反映された結果、大幅に鈍化した。市場予想(10万6,000人増)も大きく下回った。また、8月の数値は15万9,000人増から7万8,000人増に、9月の数値は25万4,000人増から22万3,000人増にそれぞれ大きく下方改定されている。
新規雇用者数増の内訳をみると、民間部門は2万8,000人減、政府部門は4万人増(添付資料表2、図2参照)。民間部門では財部門が3万7,000人減となり、建設業(8,000人増)はプラスを維持したものの、製造業が4万6,000人減となっている。製造業は、輸送機器が4万4,000人減と押し下げ要因の大部分を占めた。ボーイングのストライキに伴い、3万3,000人が解雇されたほか、下流のサプライヤーの雇用にも影響が生じたことが要因として指摘されている(「ワシントン・ポスト」紙電子版11月1日)。
サービス部門は9,000人増で、ヘルスケアを中心とした教育・医療(5万7,000人増)は引き続き増加したものの、対事業所サービス(4万7,000人減)、小売業(6,000人減)、娯楽・接客業(4,000人減)など幅広い業種でマイナスとなった。
平均時給は35.5ドル(前月35.3ドル)で、前月比0.4%増(前月:0.3%増)、前年同月比4.0%増(前月:3.9%増)だった。市場予想は前月比0.3%増、前年同月比4.0%増だった。業種別にみると、前年同月比では情報業(5.1%増)、商業・運輸・倉庫業(3.1%増)などが前月と比較して押し上げ要因となった。他方で、教育・医療(2.9%増)、娯楽・接客業(3.6%増)などは伸びが低下した。
今回の結果は、ハリケーンやストライキによる一時的な影響が大きく寄与しており、雇用統計から労働市場の実態を推測することは難しそうだ。ただし、労働省が発表している失業保険給付者数をみると、10月前半はハリケーンの影響に伴って新規失業保険給付者数が一時的に増加したものの、第3週以降はハリケーン前の水準に低下しており、今回の雇用統計で見られた極端な弱さは一過性のものとなる可能性が高い。このため、11月6~7日に行われる連邦公開市場委員会(FOMC)では、今回の雇用統計が及ぼす影響は極めて限定的になると想定される。
(注1)失業者に加え、「現在は仕事を探していないが過去12カ月の間に求職活動を行った者」と「フルタイムを希望しているもののパートタイムで妥協している者」を合わせて算定した数値。
(注2)10月にフロリダ州を直撃したハリケーン「ミルトン」の影響は、テクニカルな要因により、失業率などの測定に用いられる家計調査と新規雇用者数や賃金の測定で用いられる事業所調査の間で影響度が異なっている。事業所調査では、調査期間中に給与が発生していない場合には雇用者数としてカウントされない。一方で、家計調査では、悪天候を含むさまざまな理由により働けず、給与が支払われていない場合であっても、雇用されている者は対象としてカウントされる。このため、労働省は事業所調査ではハリケーンの影響が顕著に見られたものの、家計調査では明らかな影響は見られなかったとしている。
(加藤翔一)
(米国)
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