10月の物価上昇率は2021年11月以来の低水準、大統領は管理為替相場解除の可能性示唆(アルゼンチン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月15日 0時45分
アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は11月12日、2024年10月の消費者物価指数(CPI)上昇率が全国平均値で前月比2.7%と発表した。前月比では2カ月連続の低下となり、2021年11月以来の低水準に達した。前年同月比(年率)では6カ月連続で減速し、2024年9月まで10カ月連続で200%を超えていたが、2024年10月は193%に低下した(添付資料図参照)。1~10月累計の物価上昇率は107.0%だった。
10月の前月比伸び率を項目別にみると、季節によって価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスは1.4%で、前月の2.9%から減速した。季節変動要因のある品目を除いたコアインフレ率は2.9%と前月の3.3%から減速し、2020年9月以来の低水準となった。エネルギーや公共サービスなどの価格が規制されている財・サービスは2.7%で、前月の4.5%から大きく減速した。
前月比の伸び率を費目別にみると、平均値を上回ったのは住宅・光熱・その他燃料の5.4%、衣類・靴類の4.4%、外食・ホテルの4.3%、医療・健康の3.6%などだ(添付資料表1参照)。CPIに占める比重が大きい食品・飲料(酒類を除く)は1.2%にとどまり、2020年6月以来最も低い水準となった。
11月12日付の現地紙「インフォバエ」(電子版)は、CPI上昇率減速の主な原因は、政府が、通貨ペソを月2%切り下げるクローリング・ペッグで為替を維持していることで、物価上昇への圧力を抑制できたことを挙げている。また、中央銀行が6カ月ぶりに政策金利を40%から35%に5ポイント引き下げたことは、今後もCPI上昇率の減速を持続できる自信があってこその措置だ、とする現地エコノミストらの見方を伝えた。11月13日付の現地紙「エル・クロニスタ」(電子版)は、10月のCPI上昇率が予想より低下した原因として、燃料価格が低下したこと、気温上昇による需要の低下が天然ガス価格の値下げにつながったことを挙げた。
多くのエコノミストらの今後の予測では、公共料金の値上げや季節で価格が変動する品目の上昇リスクはあるだろうが、基本的にCPI上昇率は全体として緩やかな減速傾向が続くとしている。今回のCPI上昇率鈍化の発表を受け、ルイス・カプート経済相は「規制の緩和、マクロ経済の改善、私財を尊重する取り組みを続けていく」と述べた。ハビエル・ミレイ大統領も、同日の演説で「インフレ率がこのまま2カ月間連続して低下傾向を保てば、中銀は対ドル公定レートのクローリング・ペッグを現在の2%から1%に引き下げる。1%を3カ月間続けた後、為替規制を解除する」と発言した。ジェトロの独自調査によると、11月13日現在、燃料と食品などに価格に大きな値上げはみられない(添付資料表2参照)。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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