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レバノン大統領が2年ぶりに選出、国家の団結を強調(レバノン)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月15日 14時10分

添付資料PDFファイル(201 KB)

レバノン国営通信(NNA:National News Agency)は1月9日、レバノン第14代大統領にレバノン国軍司令官のジョセフ・アウン氏を選出した、と報じた。大統領は議会の投票で選出されるが、アウン氏の得票数は99票で、他の候補者への投票数が計14票、白紙票が9票、無効票が5票だった。就任スピーチにおいて、アウン氏は国家の団結を強調するとともに、司法の独立を保障するための制度改革、国境画定のための軍備増強、イスラエルの侵攻への対抗の重要性に言及した。

レバノンの大統領は2022年10月に前職のミシェル・アウン氏の任期が終了して以来約2年間空席になっていた。レバノンでは宗教、民族間の勢力均衡のため権力分散が行われており、長らく、派閥を超えた支持を得られる大統領候補が選出できていなかった。ロイター通信によると、ヒズボラが支持する候補者が立候補を取り下げてジョセフ・アウン氏への支持を表明したことで、同氏の支持が拡大したという。同氏が籍を置いていたレバノン国軍は米国の支援を受け、ヒズボラと対抗していた。レバノン国営通信は、国連レバノン特別調整官、米国大統領特使、アラブ連盟事務局長のほか、EU、英国、サウジアラビアの駐レバノン大使がアウン氏の当選に祝意を表した、と報じている。

レバノンでは2019年以降、深刻な経済危機が続いており、2020年に債務不履行に陥った(2020年3月18日記事参照)。2024年12月に世界銀行が発表したレバノン経済モニター(LEM)によると、2024年のレバノンの実質GDP成長率はマイナス5.7%と推計され、インフレ率、財政収支、貿易赤字といった主要経済指標も2019年以降悪化傾向にある(添付資料表参照)。LEMは、イスラエルとヒズボラの紛争(2023年10月11日記事2024年9月24日記事参照)によって、レバノンの主要産業である観光業の収入が低迷したことがマイナス成長の要因と分析している。今後の経済見通しについては、紛争からの復興のためには財政支出の増加が不可欠だが、政府支出の増加は通貨流通量の増加や外貨流動性の減少につながりかねない。債務不履行により資金調達が妨げられている中、レバノンが経済危機解消に取り組むためには、国際資本市場へのアクセスを回復するための包括的な債務再編と戦略的な投資が不可欠、と分析した。

(塩川裕子)

(レバノン)

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