トランプ米大統領、エネルギー関係で5本の大統領令に署名、規制の見直し・緩和を推進(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月22日 13時15分
米国のドナルド・トランプ大統領は1月20日、エネルギー政策で5本の大統領令(注)に署名した。このうち「米国のエネルギーを解き放つ」と題された大統領令は、各種規制などを見直し、緩和していくための措置を多数盛り込んでいる。主な内容は次のとおり。
(1)政策の方向性
外洋大陸棚を含む連邦の土地と海域でのエネルギー探査と生産を促進する
レアアースを含む非燃料鉱物の生産者、加工者としての地位を確立する
国内の全ての州と地域で信頼できるエネルギーの豊富な供給が容易に利用できるようにする
エネルギーに関する全ての規制要件が明確に法律に基づいていることを保証する
消費者が自動車を選択できるようにする。公平な規制環境の確保、ガソリン車の販売を制限する州の排出ガス規制免除の終了、電気自動車(EV)を優遇してEV購入を事実上義務付ける不公平な補助金や、そのほか政府が課す不適切な市場のゆがみを排除する
消費者が家電製品を自由に選択できるようにする
規制の正しい意思決定と米国民の利益を優先するため、規則、規制、行動の世界的な影響は国内のコストや利益とは分けて報告することを保証する
(2)国内のエネルギー開発に負担をかけ得る措置の審査
各機関に対し、規制、命令、ガイダンスなど、国内のエネルギー開発・使用などに過度な負担をかける措置の特定を命じるとともに、特定された措置を可能な限り速やかに停止・改定・撤回するための行動計画を30日以内に策定する。また、司法長官は、上記により特定された措置に関する司法的な救済措置などを講じる。
(3)特定の大統領令、規制措置の撤回・改定
大統領科学技術諮問委員会など、気候変動対策に関連する機関や、役職の設置などを定めた複数の大統領令を取り消し、実施・配分されていた資金・リソースを再配分する。
(4)エネルギー優位性確保の許可手続きの迅速化
環境影響評価に関する従来の大統領令を廃止するとともに、30日以内に国家環境政策法に基づく各種ガイダンスを提供する。
(5)温室効果ガス(GHG)の排出量分析手法などの見直し
GHGの社会的コストに関する省庁間作業部会 (IWG)を廃止するとともに、同機関のGHG測定手法や、社会的コストの算定手法などの基準を撤回する。これに代わり、環境保護庁(EPA)長官が従来の算定方法の「不備」に対処するためのガイダンスを60日以内に提供する。また、GHGが大気汚染物質であると定義した「大気浄化法第202条(a)に基づくGHGの危険性と原因、または寄与の調査結果」に基づく最終規則の合法性なども、EPA長官が30日以内に調査し、関係機関とともに行政管理予算局(OMB)長官に共同勧告を提出する。
(6)グリーン・ニューディールの終了
インフレ削減法(IRA)とインフラ投資・雇用法(IIJA)で割り当てられた資金の支出を即時停止する。各機関は90日以内にこれらの法令に基づく補助金などが(1)の政策に合致しているかどうか評価を行い、国家経済会議(NEC)とOMB長官にレビューを提出する。
このほか、液化天然ガス(LNG)輸出を迅速に再開させるための措置や、重要鉱物の採掘・加工に関する規制を緩和する措置などについても言及している。
(注)今回署名した大統領令は、(1)米国のエネルギーを解き放つ、(2)アラスカの並外れた資源の潜在能力を解き放つ、(3)国家エネルギー非常事態の宣言、(4)国際環境協定でも米国を第1に位置づける、(5)外洋大陸棚における洋上風力発電リースからの一時的な撤退と、連邦政府の風力発電プロジェクトに対するリースや許可慣行の見直しの計5本。
(加藤翔一)
(米国)
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