メキシコ国会、司法改革案を可決、各界・国内外からは反対の声(メキシコ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月26日 0時45分
メキシコの上院で9月11日、18の憲法改正を含む20の改正案(2024年2月7日記事参照)のうち、司法改革案が賛成86票、反対41票で可決された。同法案はアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が2月5日に国会に提出していたもの。与党連合は6月2日の国会議員選挙で、下院で憲法改正が可能な3分の2以上の議席を獲得していたこともあり(2024年6月5日記事参照)、下院では同改革案は9月4日に賛成357票、反対130票で可決されていた。上院では与党連合はわずかに3分の2以上に届かなかったが、今回の司法改革案の採決では、国民行動党(PAN)のミゲル・アンヘル・ユネス・マルケス氏が賛成に回って可決されたため、野党も一枚岩ではないことが露呈した。AMLO大統領は一連の憲法改正などを実現すること(通称:プランC)を目指してきた(2023年6月26日記事参照)。今回の司法改革可決でそれが現実となり、そのほかの改正案についても注目される。司法改革の詳細については、9月15日に連邦官報に掲載された(2024年9月26日記事参照)。
司法改革案では、最高裁判所判事を選ぶ際に、行政府、立法府、司法府からそれぞれ候補者を提出し、国民投票で公選することが改正内容の一部だ。現時点で与党連合が多数を占める中、三権分立が懸念され、司法の独立が危ぶまれていた。そのため、メキシコの政治・経済団体だけでなく、米国やカナダの商工会議所、米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表も懸念を表明していた。
AMLO大統領は記者会見で「われわれはメキシコを前進させ、世界に模範を示すつもりだ。司法改革が達成することになり、大変うれしく思う」と語った。また、クラウディア・シェインバウム次期大統領も、自身のXで司法改革を支持していた。
一方で、メキシコ経営者連合会(COPARMEX)はプレスリリースで「承認された司法改革は、司法の自律と効果的な対抗勢力としての役割を損なうものだ。この憲法改正案は社会の議論に耳を傾けることなく承認され、民主主義と司法の独立に影響を与えた。この改革により、貿易相手国との関係、資本の流れ、経済成長を危険にさらし、メキシコの制度的な脆弱(ぜいじゃく)性について、メキシコ政府は懸念すべきシグナルを送っている」と、司法改革に対して激しく非難した。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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