国際司法裁判所、イスラエルにガザ地区南部ラファでの軍事作戦停止の暫定措置命令(イスラエル、パレスチナ、南アフリカ共和国、オランダ、ウガンダ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月27日 14時0分
国際司法裁判所(ICJ)は5月24日、南アフリカ共和国がイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区南部ラファでの軍事作戦停止をICJに要請した件を巡り、イスラエルに対し、ガザ地区での軍事作戦を停止するよう暫定的な措置を命じた。
南アは2023年12月に「集団殺害の疑い」でイスラエルをICJに提訴し(2024年1月12日、1月15日記事参照)、ICJが1月26日にイスラエルに対し暫定措置を命じていたが(2024年1月29日記事参照)、南アは5月10日にイスラエルによるラファでの軍事作戦の即時停止などの追加の暫定措置をICJに求めていた。
ICJは「ラファでの軍事攻撃に伴う膨大なリスクが顕在化し始めており、作戦が継続されれば、さらに激化すると考える」とし、(1)2024年1月26日と2024年3月28日の命令(注)で示した暫定措置の再確認、(2)イスラエルは(a)ラファでの軍事攻撃とその他の行動を直ちに停止、(b)緊急に必要とされる基本的なサービスと人道支援を大規模に提供するため、ラファ検問所の開放を維持、(c)国連の調査団がガザ地区に自由に立ち入ることができるよう、効果的な措置を講じること、(3)イスラエルはこの命令から1カ月以内に、命令を実施するために取られた全ての措置に関する報告書をICJに提出することを命じた。
なお、それぞれの評決はいずれも賛成13票、反対2票で、ウガンダのジュリア・セブティンデICJ副所長とイスラエルのアハロン・バラク臨時裁判官が反対票を投じた。
南ア大統領府は5月24日に声明を発表し、「南アはICJが出した命令を歓迎する。この命令は、ジェノサイド条約に基づく義務に従い、また、ラファの市民が直面している生活状況の悪化を考慮し、イスラエルに対し軍事作戦を直ちに停止するよう命じるものだ」とした。シリル・ラマポーザ大統領は「国際法の下で、イスラエルは裁判所のこの命令と、1月26日と3月28日の命令を順守する義務がある。同様に、国際法の下で、いかなる理由があってもジェノサイドの禁止は違反を許さない最高規範」と述べた。
パレスチナ自治政府(PA)の外務・移民庁は5月24日、「ICJがイスラエルに対し、ラファでの軍事攻勢やその他の行為の停止を含む一連の新たな法的拘束力のある暫定措置を求める命令を出したことを歓迎する」との声明を出した。
一方、イスラエルの国家安全保障評議会(NSC)議長と外務省報道官は5月24日に共同声明を発表し、「南アによる集団殺害の提訴は虚偽であり、言語道断で、道徳的に忌まわしい」と非難した。その上で「イスラエルは、自国の領土と国民を守る権利に基づき、道徳的価値観に沿って、国際人道法を含む国際法に従って行動している」とし、「イスラエルはラファでパレスチナの民間人に物理的破壊をもたらす可能性のある軍事行動は行っておらず、今後も行うつもりはない」と述べた。
(注)ICJはイスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザのパレスチナ人に基本的な食料を遅滞なく届けるために必要かつ効果的な措置を講じるよう命じたもの。
イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。
(中溝丘)
(イスラエル、パレスチナ、南アフリカ共和国、オランダ、ウガンダ)
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