太陽鉱工、マレーシア東海岸で起工式を開催、供給リスク回避を意識(マレーシア、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月26日 0時10分
素材メーカーの太陽鉱工(神戸市)は12月18日、マレーシア東部パハン州の州都クアンタン市において、使用済み触媒のリサイクル工場の起工式を開催した。建設着工は2025年第1四半期、生産開始は2027年前半を予定している。起工式には、パハン州政府関係者、マレーシア投資開発庁(MIDA)のほか、設計・調達・建設(EPC)契約を調印した東洋エンジニアリング・アンド・コンストラクションをはじめ関連企業など約50人が参加した。
工場では、製油所で発生する使用済み触媒を回収し、含有するモリブデンおよびバナジウムを分離する。分離後は、モリブデン酸、五酸化バナジウムとして、同社は全量を日本に輸出する。最終的に、これらはフェロモリブデン、フェロバナジウムに加工される。モリブデンは銅鉱の副産物として比較的潤沢ながら、バナジウムの供給元は中国、CIS諸国、南アフリカ共和国など比較的地政学リスクのある国・地域に所在するため、サプライチェーン・リスクを回避するという意味で本工場の意義は大きい。元々、日本国内において、使用済み触媒が限定的なため、同社にとってその確保が経営課題となっていた。鈴木一史代表取締役社長は、本工場は同社初の海外工場になる、とその意義に触れた。
クアラルンプールを取り囲む日系企業の集積が多いスランゴール州では、約370社程度の日系製造業が進出する一方、パハン州では、インフラの未整備や産業集積不足などから同20社弱程度にとどまる(ジェトロ調べ)。同社の進出理由の1つが、同州南に位置するジョホール州ペンゲランに位置するマレーシア国内最大級の石油精製・石油化学コンプレックス事業(RAPID)だ。同製油所はマレーシアで初めて中東産重質油を使用するもので、本製油所からの使用済み触媒を利用することで、太陽鉱工は原材料を豊富に確保できる。また、パハン州は、人件費がスランゴール州などよりも安価というメリットもある。本事業は、重質油から抜き出した使用済み触媒を、環境局(DOE)の環境基準を順守して適法に処理できるという環境上のメリットへの期待も大きい。
パハン州クアンタン市内のホテルで開催された起工式(ジェトロ撮影)
(新田浩之)
(マレーシア、日本)
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