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米民主党全国大会、党の団結を促す熱狂、選挙戦への影響は限定的との見方も(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年8月26日 11時0分

米国イリノイ州シカゴで8月19日から開催された民主党全国大会が、8月22日に閉幕した。同党の政策綱領が正式に採択され(2024年8月20日記事参照)、カマラ・ハリス副大統領とミネソタ州のティム・ウォルズ知事がそれぞれ、大統領候補、副大統領候補としての指名受諾演説を行った。米国の主要メディアは、大統領候補交代(2024年8月7日記事参照)で混乱していた同党を団結させることに成功したと評する一方で、今後の選挙戦へ与える影響は限定的との見方を示した。

ハリス氏は、大会最終日の8月22日に演説した。インド南部からの移民である自身の母を「聡明で、なまりのある身長5フィート(約150センチ)ほどの褐色の女性」と回想した上で、「子供のころ、世間が時として彼女をどのように扱うかを目の当たりにした」と述べ、人種を超えた団結を促した。女性の人工妊娠中絶権を認めた「ロー対ウェイド判決」の破棄(2022年6月27日記事参照)がもたらした影響にも触れ、人工妊娠中絶に厳しい態度をとる共和党を批判したほか、移民政策については、国境警備強化の重要性を認識していると主張し、「破綻した移民制度を改革する」と述べた。これらの方針は、いずれも民主党の政策綱領に明記されている。その後、「信じられないほど素晴らしい旅路の次の一歩を踏み出す準備ができている米国が見える」と締めた。議会専門誌「ザ・ヒル」(8月23日)は、ハリス氏は自身の大統領選挙への立候補を、国民に新たな希望と団結を呼び起こし、米国に対する国際的な尊敬を高めるための取り組みと位置付けている、と評した。

ウォルズ氏は、大会3日目の8月21日に演説した。同氏は、民主党が「自由」について話すときは、「自分で医療を決定する自由、そして、子供たちが射殺される心配をせずに学校に行く自由のことだ」と述べ、今回の大統領選の争点となっている人工妊娠中絶や銃規制(2024年8月15日記事参照)について、共和党との違いを強調した。そのほか党大会では、ジョー・バイデン大統領、バラク・オバマ元大統領、ビル・クリントン元大統領、ヒラリー・クリントン元国務長官、ミシェル・オバマ元大統領夫人などが演説し、ハリス氏への支持を明確にした。

大会会場近くでは、パレスチナ自治区ガザ地区で攻撃を続けるイスラエルへの対応について、バイデン政権を非難するデモが行われたが、全国大会に影響を及ぼさなかった(ザ・ヒル8月23日)。民主党の予備選挙では、イスラエルへの対応を巡ってバイデン大統領に抗議票が集まったほか(2024年6月11日記事参照)、今回と同じシカゴで1968年に行われた民主党の全国大会では、ベトナム戦争に反対するデモ隊と警察が激しく衝突したことなどから、デモの影響が懸念されていた。

総じて成功したとの見方が多い民主党全国大会だが、今後の選挙に与える影響は大きくないと冷静にみられている。政治専門紙「ポリティコ」(8月23日)は、「このようなイベントは、党に忠誠を誓う人々を興奮させるために存在する」「大会のインパクトは、通常かなり短い」といった同紙記者の見方を紹介した。ただし、ハリス氏の立候補表明から1カ月も経っておらず、国民全体に対する同氏立候補の事実を浸透させたこと、TikTokなどSNSを積極的に活用していたことなどから、過去の党大会よりは選挙戦に与える影響は大きいとの見方も同時に紹介した。

(赤平大寿)

(米国)

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