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燃油補助金が年間1兆円超、補助金廃止とインフレのジレンマ、アナリスト指摘(エジプト)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月7日 0時10分

エジプト石油・鉱物資源省は10月18日、2024年で3回目となる燃油価格引き上げを発表した。オクタン価95ガソリンを1リットル当たり17.00エジプト・ポンド(約52.7円、EGP、1EGP=約3.1円)へ13.3%値上げ、ディーゼルを13.50EGPへ17.3%値上げした(2024年10月22日記事参照)。しかし、それでも、平均で1リットル20EGPという国内の石油生産コストには及ばず、燃油補助金による穴埋めが依然として必要だ。

10月30日付「アハラム・オンライン(ahram online)」(注)の報道によると、エジプト石油庁の元副長官のメドハト・ユセフ氏は、世界のブレント原油価格上昇やエジプトの相次ぐ通貨切り下げを受け、国内の石油生産コストは1リットル平均20EGPに達しており、オクタン価95ガソリンの小売価格は本来、1リットル約21EGPが適正価格だという。値上げ後の価格17EGPでさえ4EGP及ばない。同氏は、国際原油価格が1バレル60ドルにまで下がらない限り、燃油価格はさらに上昇する可能性が高いと懸念している。

また、元石油・鉱物資源相のオサマ・カマル氏によると、ディーゼル燃料については、生産コストだけでも1リットル約35EGPに達し、小売価格13.5EGPには遠く及ばない。国内の1日当たりのディーゼル消費量は4万~4万2,000トンで、燃料補助金1日当たりの支出総額は約4億5,000万EGPに上るという。石油製品全体では、補助金投入額が1日10億EGP、年間3,500億EGP(約1兆850億円)を超える。

さらに、金融アナリストは、燃油価格値上げが特に農産品の輸送コストに反映して食品価格高騰を引き起こすとし、さらに、8月から9月にかけて値上がりした地下鉄運賃や電気料金など直近の値上げが家計に及ぼす悪影響が今後表面化するとした。

燃油値上げによって燃料補助金を段階的に廃止することは、IMFによる80億ドルの金融支援の条件として政府がIMFと合意した経済改革の一部だ(2024年3月13日記事参照)。

「アハラム・オンライン」の7月24日付記事によると、 ムスタファ・マドブーリー首相は記者会見で、政府は2025年末までに段階的に燃料油を値上げして燃料補助金を廃止することが目標と述べた一方、10月の記者会見では、燃料価格が1バレル73ドルで安定している限りは、2025年末まで値上げしないとも述べていた(同紙10月19日付)。

エジプトは新型コロナウイルス禍や、ロシアのウクライナ侵攻に伴う食料や資源価格高騰による貿易赤字で外貨が流出し、国内では油田開発が滞って現地生産が伸び悩み、石油の輸入依存度を高めた。さらに、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に端を発するスエズ運河の収入減少(2024年10月9日記事参照)で外貨収入が減り、輸入がより厳しくなっている。

(注)エジプトの有力日刊紙「アル・アハラム(Al-Ahram)」発行の英語ニュースウェブサイト

(西澤成世)

(エジプト)

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