モーリタニア・セネガル海域をまたぐ海底ガス田が始動(モーリタニア、セネガル)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月16日 0時45分
海底ガス田「グラン・トルチュー・アハメイム(GTA)」で2024年12月31日、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)船への液化天然ガス(LNG)の流入が開始された。同ガス田は、米国石油会社コスモス・エナジー、英国メジャーのBP、セネガルのペトロセン石油公社およびモーリタニア炭化水素公社(SMH)から成るコンソーシアムが、2015年から開発してきたBPの公式コミュニケおよび両国の共同コミュニケで発表された。
このプロジェクトはモーリタニアとセネガル両国をまたぐ海域で発見され、プロジェクトのフェーズ1が完全に稼働すると、年間約230万トンのLNGが生産される見込みだ。GTAは、両国沖合120キロメートル、深さ2,850メートルに位置しており、アフリカで最も深い海底ガス田プロジェクトとなる。
モーリタニアのモハメド・ウルドモハメド・マラニン・ウルド・ハレド・エネルギー・石油相は12月31日の閣僚会議で、生産チームが前処理ユニットの圧力の安定化に成功したことで生産段階に入り、2025年第1四半期には輸出向けの最初のガス分子の液化を目指すと述べた。また、GTAの生産開始の影響はさまざまだとした上で、最注目事項はガスを利用した電力の生産であり、両国国境線に近い沿岸の町ンジャゴに発電所を建設するプロジェクトが進行中で、225メガワット(MW)の出力が期待されていると、政府通信社AMIは報じている。
セネガルのビラム・スレイ・ジョップ・エネルギー・石油・鉱山相は2025年1月3日の国営放送RTSのインタビューで、同プロジェクトを、最終投資額約75億ドルでアフリカ最深インフラという規模の大きさ、さらには2国間連携および官民連携のモデルとなりうるセネガルとモーリタニアの経済外交協力の成熟度といった面から、「歴史的」と形容した。同相は、両国へそれぞれ1日に3,500万立方フィート(約100万立方メートル)のガスの供給が見込まれているが、輸出を視野に入れたガスの電力化とガスの産業利用が主な用途だと述べた。
一方、2023年2月にGTAフェーズ2の開発モデルの評価がコンソーシアムによって実施されたが、その後に大統領に就任したセネガルのバシル・ジョマイ・ファイ大統領とモーリタニアのモハメド・ウルド・ガズアニ大統領は、生産開始の大幅な遅れとプロジェクトへの投資額の増大を受け、契約再交渉の意向を示している。また、コスト・オイル(注)に関する当事者間の合意形成の難しさなどから、BPが最終的にGTAのフェーズ2の実現をちゅうちょしているという報道もある(「ジュヌ・アフリーク」12月17日)。今後の同プロジェクトの展開が注目される。
(注)開発費用の償還に充てられる純生産の割合。市場価格で取得するプライス・オイルに対して、石油生産会社や産油国の国有石油会社が開発権の所有者として取得する原油。
(渡辺智子)
(モーリタニア、セネガル)
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